2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies in antioxidant property of loquat fruit
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20K06013
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小原 均 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 教授 (40160931)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビワ品種 / 抗酸化能 / 抗酸化物質含量 / プロヒドロジャスモン(PDJ) / アブシシン酸(ABA) |
Outline of Annual Research Achievements |
ビワ果実の消費拡大に寄与可能な高付加価値果実生産を可能とする基礎資料を得ることと技術開発を図ることを目的に、まず、ビワ24品種を供試し、収穫適期の果肉中の抗酸化能としてDPPHラジカル消去活性ならびに親水性および疎水性酸素ラジカル吸収能(H-ORACおよびL-ORAC)を、抗酸化物質として総カロテノイド(TCA)および総フェノール(TPH)含量をそれぞれ測定した結果、それぞれ品種によって大きな差異が見られた。これら結果から、比較的抗酸化性が高い品種として‘長崎早生’および‘房光’が、低い品種として‘白茂木’および‘なつたより’が挙げられ、先行研究の結果も踏まえると‘長崎早生’および‘房光’は健康機能性の高い品種であると推察された。 次に、‘田中’果実において、先行研究で着色開始10日前の50 mg/L プロヒドロジャスモン(PDJ)処理は抗酸化性を高める効果を有する可能性が示されたことから、好適な処理濃度を検討した結果、50 mg/Lを含むいずれの濃度処理果においてもTCA含量、TPH含量およびDPPHラジカル消去活性に無処理果との有意な差異が見られなかった。この結果から、PDJ処理の抗酸化性を高める効果は不安定であるか、もしくはないものと推察された。一方、アブシシン酸(ABA)の異なる濃度および時期により処理した結果、無処理果と比べ、いずれも着色10日前処理で、TPH含量は2000 mg/L処理果で有意に高く、TCA含量およびDPPHラジカル消去活性は2000および3000 mg/L処理果で有意に高かった。ただし、いずれの濃度処理果でも落果が見られ、高濃度ほど多かったことから、ABA処理は成熟を促進し、高濃度処理ほどその効果が高いと推察された。これらのことから、着色開始10日前の2000 mg/L ABA処理は‘田中’果実の抗酸化性を高める好適な方法であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、ビワ果実の抗酸化性(抗酸化能および抗酸化物質含量)の品種間比較では、ビワ24品種を供試し、収穫適期の果実の抗酸化能としてDPPHラジカル消去活性、H-ORACおよびL-ORACを、抗酸化物質としてTCAおよびTPH含量をそれぞれ測定して抗酸化性を評価し、健康機能性の高い品種を推察することができ、当初計画をほぼ達成できたと考えている。しかし、抗酸化能のうち、いわゆるポリフェノール類の抗酸化能を評価するH-ORACおよびL-ORACは手法を検討後に測定できたが、カロテノイド類の抗酸化能を評価する一重項酸素吸収能(SOAC)については、手法を検討している段階で未測定だったため、SOACおよび抗酸化能の総量を品種間で比較するには至っていない。 次に、‘田中’果実において、PDJの抗酸化性に及ぼす効果を再検討した結果、PDJの抗酸化性を高める効果は年次の違いにより差異があることが示され、PDJ処理では安定した効果が望めないと判断された。一方、ABA処理では、処理濃度を1000、2000および3000 mg/L、処理時期を果皮の着色開始10日前および着色開始直前ならびに適熟前として抗酸化性を高める好適な処理濃度および時期を検討した結果、着色開始10日前の2000 mg/L ABA処理が最も効果的であると判断された。これらのことから、‘田中’果実の抗酸化性を高める効果はPDJ処理よりABA処理の方が高いことが明らかとなり、PDJ処理およびABA処理が‘田中’果実の抗酸化性に及ぼす影響の検討については当初計画を達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえ、まず、ビワ果実の抗酸化性の品種間比較では、供試可能な品種を用いて、未測定であるSOACの手法を確定して測定を行い、SOACおよび抗酸化能の総量の品種間比較を行い、品種間差異を明らかにする。また、抗酸化性が比較的高いおよび低いと評価した供試可能な品種についてはビワ果実の主要なカロテノイド成分であるβ-カロテンおよびβ-クリプトキサンチン含量も測定して再評価を行う。 次に、‘田中’果実の抗酸化性を高める効果はPDJ処理よりABA処理の方が高いことが明らかとなったことから、ABAの好適な処理方法と考えらえた果皮着色開始10日前の2000 mg/L ABA処理を行い、当初計画に従い、処理後の果皮色、果肉色および抗酸化物質含量の推移を明らかにするとともに、収穫適期における抗酸化性を評価し、ABA処理の効果の安定性について検討を行う。一方、ABA処理により成熟が促進されたことから、ABA処理の効果はABAの直接的な作用によるものか、または成熟関連植物ホルモンであるエチレンを介した間接的な作用によるものかを探るため、処理後の果実からのエチレン発生量および果実中のABA含量の推移を明らかにして、植物ホルモンとの関係から、ABA処理の作用機構の一端について考察を行う。
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