2020 Fiscal Year Research-status Report
Efficient haploid production using the pseudo-fertilized ovule culture and clarification of the parthenogenesis mechanism in citrus.
Project/Area Number |
20K06020
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
國武 久登 宮崎大学, 農学部, 教授 (80289628)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カンキツ / 半数体 / ガンマ線 / 偽受精胚珠培養 / 単為発生 / 晩白柚 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンキツ(Citrus spp.)は栄養繁殖性作物でありヘテロ性が高いことから、諸形質の遺伝様式の解明が難しく、効率的な育種が困難である。半数体は倍加処理によって容易に純系を得られることや、相同ゲノムを1つしか持たないことから遺伝子解析や計画育種のための重要な育種素材となる。カンキツにおける半数体誘導は葯培養や花粉培養による雄核発生の事例があるが限定的である。我々は、花粉への軟X線照射と胚珠培養を組合せることにより半数体を育成した。しかしながら、半数体の個体数は限られており、多数の半数体を獲得し、その発生メカニズムを解明する必要がある。そこで、本研究では、一般的に軟X線よりも効果の高いγ線を花粉に照射し、ブンタンの主要品種である‘晩白柚’の偽受精胚珠培養により効率的な半数体誘導について検討した。 まず、ガンマ線照射花粉による偽受精胚珠培養おいて、ガンマ線の照射線量および胚珠培養開始時期の検討を行った。その結果として、照射線量別に行った培養では、500Gyにおいて半数性のカルスを獲得することに成功した。また、ガンマ線の花粉に対する影響を調査した結果、花粉稔性および花粉発芽率は、すべての照射線量で有意差が認められなかった。培養後の受精した個体の数は200Gy以上では300Gyの1個体のカルスのみで、200Gy以上でガンマ線による花粉内の精核に対するダメージが十分に与えられることが示唆された。胚珠培養開始時期については、交配40日、60日および80日後に培養を開始し、培養の4ヶ月以内では半数体を確認することができなかったが、交配40日後では半数性カルスを獲得したこと、軟X線照射花粉の偽受精胚珠培養において交配40日後が最も半数性胚様体を獲得しやすい報告があることなどから、胚珠培養開始時期は交配40日後が適切であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
γ線照射した果実から得られた胚珠を分類し数をカウントした。胚珠の分類は、3 mm以下の胚珠、3 mmより大きい胚珠に分類した。その結果、受粉80日後に収穫した果実から取り出した胚珠は、完全種子のように中の胚が肉眼で確認できるものがあったため、完全種子の分類も加えて調査した。胚珠の総数は、交配40日後の0Gy、200Gyおよび300Gyにおいてそれぞれ153個、170個および160個、60日後においてそれぞれ147個、144個および134個、 80日後においてそれぞれ168個,169個および158個となり、胚珠の総数に関して照射処理とコントロールの間に大きな差はなかった。分類したサイズ別の数では、40日後は全ての胚珠が3 mm以下であり、胚珠の総数と同じであった。60日後では0Gyにおいて3 mm以下の胚珠が63個、3 mmより大きい胚珠が84個となり、40日後に比べて半数以上が3 mmより肥大していた。このことから、γ線の照射によって通常の種子形成が大きく阻害されていることが明らかとなった。現在、胚珠の内部の状態をパラフィン切片法により解析しており、胚のう内の状態を解析している。 また、半数体ブンタン5個体は第6連鎖群の3対のプライマー近傍の対立遺伝子は全て同じものを有していることが分かっている(Kawano et al., 2020)。本研究で得られた半数性カルス500Gy-1は‘晩白柚’由来の対立遺伝子のみを持っており、雌性配偶子由来の半数性カルスであることが分かった。このことは、前述した第6連鎖群のセントロメア付近のSSRマーカーは、本半数性カルスにおいても現存する半数体ブンタンと同じSSRアリルを示したことから、同位置に単為発生に関わる遺伝子が存在する可能性が高まった。今後、得られた半数体を順次、SSR解析を行い、単為発生に関わる遺伝子の存在を明らかにして行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
‘晩白柚’の偽受精胚珠培養による効率的な半数体作出法を確立するために、令和2年度は照射線量(γ線:0~500Gy)と花粉の種類について調査した。令和3年度は、温度(20~30℃)、発達ステージ(受粉後40~80日)について検討する。得られた胚様体はフローサイトメトリーと根端の染色体観察を行い、その倍数性を評価する予定である。さらに、単為発生に関する遺伝子の存在についても継続して調査する予定である。 また、γ線照射花粉の受粉40日後の果実を採取し、偽受精胚珠培養を行う。培養0日~4か月後の胚珠を固定し、パラフィン切片法により、胚のう内部の構造(卵細胞および中央細胞の成熟)の観察を継続して行う。
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Research Products
(1 results)