2020 Fiscal Year Research-status Report
植物標本情報を利用したハスカップの自生地探索と遺伝的多様性の解明
Project/Area Number |
20K06028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (50301875)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハスカップ / 倍数性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハスカップは北ユーラシアを中心に自生するスイカズラ科スイカズラ属の植物である。和名はクロミノウグイスカグラ、学名はLonicera caeruleaで、日本では一般にハスカップと呼ばれている。この植物の濃紫の果実はベリー類の一つとして利用されている。北海道にはハスカップが多く自生しており、その遺伝資源をもとに営利生産が進んでいるが、その遺伝的多様性や分布の様相については不明な点が多い。ハスカップの遺伝資源の特徴として、倍数性の多様性がある。これまでに、北海道に自生するハスカップには、二倍体(染色体数18本)と四倍体(染色体数36本)が存在していることがわかっている。北海道最大の自生地である勇払原野のハスカップが四倍体であるのに対し、二倍体は北海道東部に局在しているが、その詳細は不明である。本課題では、ハスカップの二倍体と四倍体の分布パターンの詳細を明らかにするとともに、倍数体と分布域の関係を解析するために、北海道東部における二倍体と四倍体が近接した地域に焦点を絞って調査を行った。これまでの自生地探索のデータから、二倍体と四倍体のハスカップが混在している浜中町茶内の湿原(略称CNI-2)について、採取許可を得てフィールド調査を行った。GPSによってハスカップの個体毎の座標データを記録し、倍数性の解析のために成葉数枚を採取した。フローサイトメーターを用いて核DNAを定量したところ、二倍体と四倍体の両方が混在して自生していることがわかった。葉のサイズと新鮮重を測定し、二倍体と四倍体を比較したところ、二倍体に比べて四倍体のハスカップの葉は厚いことが示唆された。今後、調査範囲を拡大し、ハスカップの倍数体混在集団の特徴について解析を進める予定である。一方、植物標本の調査は、新型コロナ禍において進めることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ禍において、標本調査と本州のハスカップ自生地の探索を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナに対応する施策に従い、調査が可能な範囲に焦点を絞って調査研究を進める予定である。調査対象地域については、北海道内の北海道東部、特にハスカップの二倍体と四倍体の個体数が比較的多くアクセスが容易な湿原を重点的に探索する予定である。標本調査については、本州への移動制限が緩和され、受け入れ機関の許可が得られれば実施する予定であるが、見通しが立たない状況にある。既存データの見直しや、二倍体と四倍体の果実から採取した種子を利用した後代の形質調査などの代替試験を設定し、全体計画を推進したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナ禍において、標本調査や本州での遺伝資源調査を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。移動制限が緩和され、調査が実施できる状況になった際に、当初予定の研究課題を推進する予定である。また、代替案として実験室内で遂行できるハスカップ野生株由来の後代の育成を行い、評価・解析を行う試験も計画している。
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