2020 Fiscal Year Research-status Report
サクラ属自家不和合性における新規の花粉側共通因子候補DNaJ-likeの機能解明
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20K06031
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
松本 大生 山形大学, 農学部, 准教授 (30632129)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サクラ属 / 自家不和合性 / S-RNase / DnaJ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、サクラ属のS-RNase依存性自家不和合性における共通因子候補として単離したDNaJ様タンパク質の機能解析を目的としている。初年にあたる令和3年度は以下の調査を実施した。 A. 異なるアレルのS-RNaseとDNAJ様タンパク質の結合調査:共免疫沈降によって、花粉内生DnaJ様タンパク質はPavS6-RNase以外にも組換えPavS3-RNase、組換えPavS4-RNaseとも結合することを確認した。また、抗DNaJ様タンパク質抗体および抗SLFL2抗体を用いた免疫沈降の結果、DNaJ様タンパク質はS-RNaseと結合することが報告されているSLFL2とは花粉内で結合していない可能性が示唆された。このことからDNaJ様タンパク質は直接的にS-RNaseものと推察された。 B. DNaJ様タンパク質と姉妹遺伝子の発現パターン比較: リアルタイムPCRによって調査したところ、DNAJ様タンパク質は雄性器官で特異的に発現していたのに対して、姉妹遺伝子は雄性器官では弱く、その他の器官では普遍的に発現していた。 C. DNaJ様タンパク質のS-RNase結合領域の調査:DNaJ様タンパク質と姉妹遺伝子のキメラ組換えタンパク質を作出したもののいずれもS-RNaseと結合しなかった。ただし、同様に発現させた組換えDNaJ様タンパク質自身もS-RNaseと結合しなかったことから、実験系そのものに問題があるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた3つの調査のうち、2つについて達成することができた。達成できなかった「DNaJ様タンパク質のS-RNase結合領域の調査」については実験系を検討しなおす必要があるものの、一通りのキメラタンパク質コンストラクトについては作製することができた。 これらを踏まえて、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
内生DNaJ様タンパク質と組換えS-RNaseの結合が確認できている一方で、組換えDNaJ様タンパク質とS-RNaseの結合は確認できていない。この結果の乖離を解消すべく、組換えDNaJ様タンパク質の発現方法やタグについて再度検討するとともに,DNaJ様タンパク質の花粉内生パートナーを酵母2ハイブリッド法などによって探索する。組換えDNAJ様タンパク質 がS-RNase結合を示す条件を明らかにできた場合、再度、DNaJ様タンパク質のS-RNase結合領域の調査に取り組む。 また可能であれば、当初予定していた通り、S-RNaseと結合する雌ずいタンパク質の探索にも取り組む。
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Causes of Carryover |
R3年度から他大学に異動することが決まり、機器の購入計画を大きく立て直す必要が生じたうえ、見積もり段階ではかなり高額であった移設費用を年度末まで切り詰めていった結果、大きな残額が生じた。 残額は、異動先での研究遂行において新たに必要となった機器(振とうインキュベーター、定温インキュベーター)の購入に充てる予定である。
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