2020 Fiscal Year Research-status Report
シクラメン特有の花色素発現のメカニズムとその花色への影響
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20K06034
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
高村 武二郎 香川大学, 農学部, 教授 (40253257)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シクラメン / 花色 / 花色素 / アントシアニン |
Outline of Annual Research Achievements |
黄色花品種とアプリコット色花系統を用いて開花後の花色・花色素発現および花弁表皮組織での色素分布を調査した.その結果,黄色花品種では花弁スリップ部分にアントシアニンがほとんど含まれていないのに対し,アプリコット色花系統では,花弁スリップ部分では, ペオニジン3,5ジグルコシド (Pn3,5dG)およびシアニジン3,5ジグルコシド (Cy3,5dG)といったアントシアニンが集積していた.また,アプリコット色花系統では,アントシアニンが発現している細胞と黄色のカルコノナリンゲニン2’グルコシド (Ch2’G)のみを集積している細胞とがまばらに分布しており,このことがアプリコット色を呈している要因であると示唆された. 既存の赤色花品種,桃色花系統およびその桃色花系統の突然変異により生じた赤色花系統を用いて花弁slip部分の花色と花色素を調査した.その結果,桃色花系統の突然変異により生じた赤色花系統の主要アントシアニンは,既存の赤色花品種の主要アントシアニンであるペオニジン3-ネオヘスペリドシド(Pn3Nh)とは異なるペオニジン3-グルコシド(Pn3G)であり,既存の赤色花品種と比べると花弁スリップ部分におけるL*値が高く,b*値が低くなった.シクラメンにおいてはこれまでにPn3Gを主要アントシアニンとする品種の花色に関する報告は見当たらないが,Pn3Gを主要アントシアニンとする花弁ではPn3Nhを主要アントシアニンとするものと花色が異なる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,これまでに存在しなかった花弁にカルコンとアントシアニンが共存するアプリコット色花シクラメンが生じたメカニズムとその遺伝性を明らかにすること,およびシクラメンの赤色花の特異的な配糖体型(3Nh)が花色発現および花色変異の拡大に及ぼす影響とその遺伝性・安定性を明らかにすることの2つである.本年度は,予定どおり前者においてアプリコットい色花弁の花色・花色素発現様式を,後者では配糖体型により花色発現が異なる可能性を示すことができた.これらのことを総じて上記のように判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
アプリコット色花シクラメンについては,本年度の研究過程でアプリコット色発現において花弁の向軸面と背軸面で発現様相が異なる可能性が示唆されたため,向軸と背軸のそれぞれの表皮層を剥離した後に花色素を分析する.また,つぼみステージからの経時的な花色素発現についても調査する. 赤色花の特異的な配糖体型の花色発現に及ぼす影響に関しては,赤色花品種から得られた変異体の主要花色素を同定し,Pn3Nhとの関連を明らかにする.また,3位のラムノシル化の変異・遺伝性と基質特異性を明らかにするために,Pn3G型とPn3Nh型株,およびPn3G型またはPn3Nh型株とマルビジン配糖体を主要花色素とする株のF1後代の花色素を調査する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,研究の進行状況ではなく,主に物品の価格変動等で生じた誤差によるものであり,次年度の物品費として使用する予定である.
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