2020 Fiscal Year Research-status Report
人為誘発非還元性雄性配偶子を活用した倍数性多様化法の開発
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20K06035
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
平野 智也 宮崎大学, 農学部, 准教授 (80455584)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重複受精 / 胚発生 / 重イオンビーム / 雄性配偶子 / 花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線の一種である重イオンビームをヒガンバナ科キルタンサスの二細胞性花粉に照射することで誘導された非還元性雄性配偶子「雄原細胞様精細胞」が、胚発達を伴わない異常胚乳形成に関与する可能性が示唆されている。 先行研究では、数塩基対から数十塩基対程度の欠失変異を多く誘発する炭素イオンビームを10 Gyおよび40 Gy照射することで雄原細胞様精細胞を誘発したが、本研究では効率的に染色体再編成を誘発するアルゴンイオンビームを10 Gy、40 Gy照射した花粉を人工授粉し胚発生過程を観察した。10 Gy照射花粉を交配することで異常胚乳形成胚嚢が生じ、その形成割合は炭素イオンビーム40 Gy照射時よりも高いことが明らかとなった。さらに、10 Gy照射花粉を交配して形成された正常胚嚢では胚発達の遅延が確認され、DNA二本鎖切断が残存した雄性配偶子が受精したことによって分裂に影響が生じたことが示唆された。40 Gy照射花粉を授粉後の胚珠はほぼすべてが未授精であった。以上より,アルゴンイオンビームは炭素イオンビームと比較して変異誘発効果が非常に高く、染色体橋や巨大胚乳核など多様な変異を引き起こすことが明らかになった。育種利用では低線量でも異常胚乳形成を誘発できるアルゴンイオンビームが有用であると示唆された。 炭素イオンビーム40 Gy照射花粉を授粉して得た胚珠から胚(卵細胞、受精卵)および胚乳を単離し、核染色後の蛍光強度測定でそれぞれの倍数性を調査した。異常胚乳形成胚嚢の中には,雄性配偶子と卵細胞が受精したが分裂を停止したものが存在することが示唆された。胚乳の核DNA量を推定した結果、核内倍加が認められ、受精した照射雄性配偶子の染色体異常による影響であることが示唆された。調査を継続し形成された胚と胚乳のDNA量を明らかにすることで、今後の倍数性育種への応用性可能性を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度に計画していた、雄原細胞様精細胞の誘導条件が異常胚乳形成に及ぼす影響は、当初の計画通り進行し興味深い知見が得られた。胚乳および卵細胞(受精卵)の倍数性解析については、実験手法を確立し想定した解析が可能であることを確認し、雄原細胞様精細胞の受精様式の一端が明らかとなった。調査を継続することで、来年度に計画していた結果を得ることが可能と考えられる。胚珠培養および胚嚢培養による植物体再生については、サンプルを得て胚珠培養を開始した。来年度以降に培養結果が得られる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り研究が進行していることから、来年度も計画通りに実施する。
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Causes of Carryover |
サンプル保管用の超低温フリーザーの購入に使用する予定であったが、欠品が続き年度内の購入に間に合わなかったため次年度使用額が生じた。次年度超低温フリーザーが購入可能となり次第使用する。
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Research Products
(2 results)