2021 Fiscal Year Research-status Report
人為誘発非還元性雄性配偶子を活用した倍数性多様化法の開発
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20K06035
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
平野 智也 宮崎大学, 農学部, 准教授 (80455584)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重複受精 / 胚発生 / 重イオンビーム / 雄性配偶子 / 花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線の一種である重イオンビームをヒガンバナ科キルタンサスの二細胞性花粉に照射することで誘導された非還元性雄性配偶子「雄原細胞様精細胞」が、胚発達を伴わない異常胚乳形成に関与する可能性が示唆されている。異常胚乳および胚にならない卵細胞(または受精卵)は雄原細胞様精細胞の受精様式によっては、多様な倍数性を示す可能性がある。それらから植物体再生することができれば、新たな倍数体多様化法としての応用が期待される。しかし、重イオンビーム照射花粉を授粉させたのちに発達する子房は、授粉後21日までに多くが脱落する。従って、脱落前に子房より胚珠を摘出し培養することで、胚嚢内の発達を調査した。 炭素イオンビーム40 Gyまたはアルゴンイオンビーム10 Gyを照射した花粉を授粉させ、14日後の胚珠を子房内から無菌的に摘出し、胚珠培養を行うことで胚乳由来のカルス誘導および植物体再生を試みた。ホルモンフリー培地ではカルス形成やシュート形成は見られなかった。培養後の胚珠内の胚嚢の核が崩壊していることが確認されたことから、培養途中で胚嚢発達が停止したと考えられる。植物成長調節物質を添加した培地を用いることで、いずれの照射花粉においても多数のカルス形成が観察され、オーキシンおよびサイトカイニンがキルタンサス胚珠のカルス誘導に有効であることが示された。培養を継続しすることでカルスにおける倍数性の調査が可能と考えられる。 異常胚乳形成過程を明らかにするために、授粉後14日の胚嚢を胚珠から摘出し、アクチン及び微小管を染色することで胚嚢内の細胞骨格の可視化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた胚珠培養において、カルス誘導に成功しており倍数性の調査が可能な段階まで計画を推進することができた。また、異常胚乳形成過程を明らかにするための新たな手法も確立することもできた。以上より、おおむね当初の計画通りに研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は基本的に当初の計画通りに研究を実施する。胚珠培養を継続し、倍数性の調査およびカルスからの植物体再生を試みる。受精および胚発生に必須な雄性配偶子側の因子における遺伝子発現量を解析することで、雄原細胞様精細胞における受精能の有無を評価する。これらに加えて、胚嚢内の細胞骨格から巨大胚乳核形成過程や胚珠培養による胚や胚乳の発達過程の詳細を明らかにする
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Causes of Carryover |
研究打合せおよび学会参加に関する旅費としての使用を計画したが、新型コロナ感染症対策により学会のオンライン開催に変更され、また所属機関において原則県外への出張禁止の措置がなされたため次年度使用額が生じた。また分子生物学関連のキットの欠品の影響もあった。 購入できなかったキットは次年度早々に発注を行う。また社会情勢を見ながら研究打合せおよび学会における発表を実施し、旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)