2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K06037
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
窪田 聡 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60328705)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 根域温度 / 生育制御 / トマト / アクアポリン / エチレン / オーキシン / 水透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
根域温度が植物の地上部の生育を制御するメカニズムを解明するために,トマト ‘ハウス桃太郎’を実験材料に,実験1.植物成長に対する気温と根域温度の相互関係,実験2.根系の水供給能力に対する根域温度の影響,実験3.根のRNA-seq解析,実験4.植物ホルモンに対する根域温度の影響,実験5.光合成速度に及ぼす根域温度の影響評価を行った。 実験1では草丈と葉数は根域温度の影響をほとんど受けなかったが,葉面積は気温と根域温度の両方の影響を受け,根域温度の上昇に伴い葉面積は拡大した。実験2ではプレッシャチャンバーを用い根系に0,0.25,0.5,0.75MPaの圧力をかけ,茎切断面から浸出する溢泌液の量を測定した。根長は根域温度の低下に伴い短くなった。根系全体の溢泌液量は17℃で著しく少なく,溢泌液量を根長で除して求めた単位根長あたり根の水透過性も17℃で著しく低下した。実験3では根域温度の上昇に伴いアクアポリン遺伝子(PIP2-1とTIP2-1),エチレンとオーキシン関連遺伝子,エクスパンシン遺伝子とPG1βに関係するBURPドメインタンパク質遺伝子が著しく上昇した。実験4では溢泌液中のABA濃度は17℃で増加した。実験5では葉の光合成速度と気孔コンダクタンスは,17℃になると著しく低下した。 以上のことから,根域温度は根のエチレンやオーキシン関連遺伝子の発現に影響を与え,根の細胞壁の構造が変化することにより根長が変化する。そして,アクアポリン遺伝子の発現にも影響を与えた結果,根域温度が異なると根系全体の水供給能力が変化し,葉に供給される水分量が変化して葉面積の拡大が変化するもとの考えられる。そして,根域温度は溢泌液中のABA濃度の変化を通して光合成速度にも影響を与え,葉面積と光合成速度の両方が変化することにより植物の乾物生産にも影響するものと考えられた。
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