2020 Fiscal Year Research-status Report
キクのゲノム編集効率向上のためのキク由来配列を利用した遺伝子導入系の構築
Project/Area Number |
20K06042
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
加星 光子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, JSPS 特別研究員 (50808772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 克友 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 上級研究員 (60469830)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キク / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
キクは花き産業における最重要品目の1つであるが、高次倍数性で栄養繁殖性のため、計画的な育種は難しい。CRISPR/Cas9システムを中心としたゲノム編集は、一度に複数のDNA配列に変異を入れることができ、キクの有力な育種技術になると期待される。一方、CRISPR/Cas9システムによるキクのゲノム編集効率は低く、目的通りに形質改変するには非常に労力を要する。ゲノム編集効率はCas9やguide RNAの発現レベルにより影響を受けることから、本研究では、ゲノム編集効率を上昇させるためにキクに適した遺伝子発現系の作出を目指す。 具体的には、キクのゲノム編集時に発現している転写産物を取得し、その配列から該当する遺伝子上流のプロモーターと下流のターミネーター配列を取得する。その後は取得した配列の効果をレポーター遺伝子を用いて検証し、最終的にゲノム編集に適した遺伝子発現系の作出を行う。 R2年度は、ゲノム編集時に発現している転写産物をRNA-seqにより取得することを想定していた。しかしながら、コロナウイルスの感染拡大を防ぐために所属機関において入室制限が行われ、形質転換や培養といった組換え実験が実施可能な場所における研究活動が著しく遅滞し、RNA-seqに供するサンプルを用意することができなかった。そのため、この間は、材料となる植物体の維持管理が中心になった。一方、これまで、レポーター遺伝子として用いていたGUS遺伝子の他に、LUC遺伝子がキクで利用できることを確認し、より短時間でプロモーター活性を検出できるようになった。また、これまでゲノム編集に使用してきたプロモーターが形質転換の操作により、活性が低下することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、所属機関への立ち入りが制限され、形質転換や培養といった組換え実験が実施可能な場所における研究活動が著しく遅滞し、転写産物の配列取得に用いるサンプルを用意することができなかった。 一方、これまで、キクのレポーター遺伝子としてはGUSを用いていたが、より短時間でプロモーター活性を検出できるLUC遺伝子が利用できることを確認した。また、これまでゲノム編集に使用してきたプロモーターが形質転換の操作により、活性が低下することを見出した。また、参照配列としての使用を想定しているキクEST配列について、詳細に検討したところ、より長い転写産物の配列を加えてアセンブリし直すことでより高い精度と網羅性を持つ参照配列を取得できると期待されることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大とその対策による入室制限は今年度も想定される。そこで、実験室内の滞在時間をより短時間にするように研究計画を見直している。特に、組換え実験ができない環境においても研究が進行できるよう、in silicoでの解析環境を整える。また、この数年で、long readシーケンサーの利用が広がり、費用的にも導入が可能で有効であることが分かってきている。そこで、long readシーケンサーを用いた転写産物の配列取得を行い、参照配列の精度と網羅性を高めることにする。このことにより、後の遺伝子の上流配列や下流配列の取得および検証作業が迅速に行えると期待される。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、研究が遅延したため次年度使用額が生じた。R3年度も引き続き、新型コロナウイルスの感染による実験遂行への影響が懸念されるため、翌年度分と合わせて、研究室滞在時間を減らしながら研究を推進できるように研究環境を整える。具体的には、in silicoでの解析を推進するために解析用PCとソフトウェアなどの利用を進める。また、参照配列の精度を上げることでその後の遺伝子周辺領域の配列取得や検証実験が効率化することが期待されるため、long readシーケンサーを利用した研究を行う。
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