2020 Fiscal Year Research-status Report
植物免疫のプライミングを制御するクロマチン構造と転写因子の関係
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20K06045
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安藤 杉尋 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10442831)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プライミング / 植物免疫 / クロマチン / 転写因子 / サイレンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物免疫のプライミング機構を理解するため、BTH処理によるAGO2遺伝子発現のプライミングを中心に、これを制御する転写因子の特定とその機能およびエピジェネティックな遺伝子発現制御への関与を検討する。これまでに、AGO2のプライミングを制御する転写因子候補としてWRKY25とAtHMGB9を特定している。本年度はこれら転写因子のAGO2プライミングへの関与を確認するため、変異体におけるAGO2遺伝子のプライミングの変化とキュウリモザイクウイルス(CMV)に対する抵抗性の変化を解析した。まず、wrky25-1変異体にBTH処理を行い、3日後に完全展開葉の細胞間隙に水を浸潤させてストレス処理を行い、さらに3時間後のAGO2の遺伝子発現を解析することで、プライミングの変化を野生型と比較した。その結果、wrky25-1変異体ではAGO2遺伝子発現が野生型よりもストレス処理によって強く発現誘導されたことから、AGO2のプライミングが増強されることが明らかとなった。このことから、WRKY25はAGO2のプライミングを負に制御していると考えられた。さらに、BTH処理を行ったwrky25-1変異体ではAGO2のプライミングの増強に伴ってCMV抵抗性が増強されることが確認された。AtHMGB9の変異体については、T-DNA挿入系統を2系統入手し、ホモ化を完了した。同様にAGO2のプライミングへの関与を検証する。また、AtHMGB9はAtHMGB10, AtHMGB11, AtHMGB15と遺伝子ファミリーを形成しているため、これらの遺伝子のT-DNA挿入変異体も入手した。これらにおけるAGO2プライミングを解析するとともに、AtHMGB9との多重変異体を作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、AGO2のプライミングへのWRKY25の関与が示されたことで、エピジェネティック制御への関与を解析する準備が整った。また、ターゲットとしたAGO2のプロモーター領域がAGO2のプライミングに重要な機能をもつことも、間接的に確認できたため、AtHMGBファミリーの関与についても期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
AtHMGB9については、変異体におけるAGO2プライミングの変化を早急に確認する。また、計画に従いWRKY25およびAtHMGB9のターゲット配列(AGO2プロモーター)への結合特異性を確認するため、Nicotiana benthamianaのタンパク質発現系を用いてHAタグ付きタンパク質を発現させ、DNA結合の特異性をEMSAによって示す。さらに、WRKY25およびAtHMGB9と相互作用する因子を酵母two-hybrid systemを用いて探索する。その結果単離された因子にタグを付加してN. benthamianaの一過的発現系において発現させ、WRKY25またはAtHMGB9との相互作用を免疫共沈によって確認する。WRKY25は機能的にWRKY26, WRKY33と重複することが報告されている。AtHMGB9については、AtHMGB10, AtHMGB11, AtHMGB15と相同性が比較的高い。このことから、これらのAGO2プライミングへの関与についても確認する。
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Causes of Carryover |
本年度は学会等が全てオンラインとなったため、旅費を支出しなかった。その分消耗品として、研究推進に必要な試薬の購入を行ったが、少額の残金が生じた。残金は引き続き研究推進のために必要な消耗品(分子生物学実験試薬類)の購入に使用する予定である。
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