2021 Fiscal Year Research-status Report
植物免疫のプライミングを制御するクロマチン構造と転写因子の関係
Project/Area Number |
20K06045
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安藤 杉尋 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10442831)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | プライミング / 植物免疫 / クロマチン / 転写因子 / サイレンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Defense primingの分子メカニズムの一端を解明するため、RNAサイレンシング関連因子であるArgonaute(AGO)遺伝子のPrimingに着目して解析を行っている。これまでに、シロイヌナズナの10のAGO遺伝子の中でAGO2とAOG3の遺伝子発現が抵抗性誘導剤BTH処理によってPriming(通常よりも刺激に対して強く速く応答可能な状態になること)されることが明らかになっている。 遺伝子発現のプライミングの制御機構にはクロマチン構造の変化が重要な役割を持っていることが示唆されており、AGO2の転写開始点のヒストンメチル化レベル(H3K4me3)はBTH処理によって増加し、活性化状態になっていることが明らかになっている。さらに、本領域へのRNA polymerase IIの結合性はBTH処理によって低下することが示唆された。Priming状態は、刺激に対する応答性は高いが、転写の活性化はまだ起こっていない状態である。従って、RNA polymerase IIの結合性の低下はPriming時のクロマチン構造は活性化状態であるが、実際には転写が活性化されないという状態の形成に関わる可能性がある。 さらに、BTH処理によるPriming誘導時にヒストンのメチル化レベルが変化する領域に結合する転写因子のとしてWRKY25とAtHMGB9が特定されている。WRKY25の遺伝子発現自体もBTH処理によってPriming誘導されたのに対し、AtHMGB9の遺伝子発現はBTH処理によって、Priming誘導されず、やや発現が抑制される傾向が認められた。HMGBはクロマチン構造の制御に関与することが示唆されており、転写因子の相互作用にも影響することが示唆されている。さらにAtHMGB9の機能解析を行うため、HAタグを付加した過剰発現系統の作出を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、AtHMGB9およびAtHMGB9と相同性の高いAtHMGB10, AtHMGB11, AtHMGB15の変異体を入手し、ホモ化を完了した。Athmgb9変異体にHAタグを付加した形質転換体(AtHAMG9-HA)の作出も進行中であり、これらを用いることでAGO2のプライミング制御におけるこれらの転写因子の機能が明らかになることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従いAtHMGB9およびAtHMGB10, AtHMGB11, AtHMGB15等の変異体におけるCMV抵抗性や、AGO2のプライミングの変化を解析する。同様に、WRKY25と相同性の高いWRKY26, WRKY33の変異体におけるCMV抵抗性や、AGO2のプライミングの変化を解析する。また、酵母two-hybrid system によりAtHMGB9と相互作用する因子を特定する。
|
Causes of Carryover |
昨年度と同様に学会等が全てオンラインとなったため、旅費を支出しなかった。その分消耗品として、研究推進に必要な試薬の購入を行ったが、少額の残金が生じた。 残金は引き続き研究推進のために必要な消耗品(分子生物学実験試薬類)の購入に使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)