2021 Fiscal Year Research-status Report
揺らいだ分子構造の植物病原菌エフェクターDN3の機能発現機構
Project/Area Number |
20K06049
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大木 進野 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 教授 (70250420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十棲 規嘉 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 研究員 (30804512) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エフェクター / 天然変性タンパク質 / 液液相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、天然変性タンパク質である植物病原菌エフェクターのDN3が液液相分離をするか否かを実験的に確かめた。まず、アミノ酸配列から予測したDN3は液液相分離する可能性が非常に高いことが示唆された。次に、DN3の1H-15N 2D-NMRを測定したところ、1H軸での信号の分散範囲が狭く、NMRデータからもDN3が天然変性タンパク質であることが予想できた。さらに、分子量に比して信号がブロードニングしていることが確認された。pHや温度を変化させて2次元NMRスペクトルを測定したが、スペクトルの劇的な変化は見られなかった。 次に、NMRで拡散係数を測定した。一般に、分子量が大きくなれば拡散係数は小さくなるので、物質の拡散係数を測定することによって見かけの分子量を推定することが出来る。すなわち、DN3が液液相分離してドロプレット(液滴)を形成していれば、見かけの分子量が大きくなってその拡散係数に影響を及ぼすだろうと考えた。まず、分子量が既知のいくつかのたんぱく質について拡散係数を測定し、検量線を描いた。その後、全長のDN3単体、DN3とカルモジュリン(CaM)を混合したDN3-CaM複合体、そこにETDAを加えた溶液の3種類に関して拡散係数を測定した。この結果、どの試料も見かけの分子量が理想的な単体の値よりも大きく見積もられた。結果を詳しく解析している。 最後に、TEMを用いて全長DN3とDN3-CaM複合体試料を測定した。どちらの試料でもドロプレットが観察できた。プレリミナリな結果を得ることが出来たので、今後は、ドロプレット形成の有無や大きさが溶液条件によって変化するかどうかを詳細に調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然変性タンパク質のNMR拡散係数を調べることによって、その見かけの分子量化から凝集や会合、液液相分離に関する情報が得られそうだということがわかった。これは、新しい実験の切り口として他のタンパク質の研究にも応用できることかもしれない。 今年度の成果のうちで最も大事なことは、DN3が液液相分離することを初めて実験的に確認することが出来たことである。プレリミナリな結果ではあるが、植物病原菌由来のエフェクタータンパク質の液液相分離を物理的な手法で直接観察したのは、本研究がおそらく初めてだと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、液液相分離の条件を詳細に検討することが必要になる。例えば、ドロプレットの形成は、DN3やCaM、カルシウムイオンの濃度に依存しているのか、温度やpHの影響はどうか、さまざまな要素の影響が考えられる。それらをふまえて相図のようなものが作製できれば学術的にも興味深いのではないかと考える。 また、植物細胞の中におけるこのドロプレットの生物学的な意義や、他の分子へ信号伝達をしているのかどうかを考えるうえで、標的候補の探索は一つの大きな課題であると考えている。このトピックに関しても最終年度に何らかの結果を得たい。
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Research Products
(2 results)