2020 Fiscal Year Research-status Report
害虫選択的な幼若ホルモン拮抗阻害剤の創製と実用化に向けた研究
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20K06063
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
古田 賢次郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (00575532)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼若ホルモン / 農薬 / 昆虫成育制御剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脱皮・変態などの昆虫の成育を制御することが可能な幼若ホルモン(JH)拮抗阻害剤の開発を目的としている。 今年度は、これまでにカイコに対してJH拮抗阻害活性を示すことが見出されているEthyl (E)-3-{4-[7-(4-methoxycarbonylbenzyloxy)-1,4-benzodioxan-6-yl methyl]phenyl}-2-propenoate(NY52)の詳細な阻害様式を明らかにするために、カイコJH受容体(BmMet1)を用いて競合阻害試験を行った。その結果、NY52はBmMet1においてJHと同じ部位に結合することが明らかになった。また、NY52とBmMet1との結合をコンピューター上でのドッキングシミュレーションを用いて解析したところ、in vitroおよびin vivoにおいて生物活性に必要である2つのエステルがBmMet1との相互作用に重要な役割を果たしていることが示唆された。これらの結果に基づき、NY52をリード化合物として分子デザインを行い、誘導体を合成したところ、in vitroにおいてNY52よりも高いJH拮抗阻害活性を示す新規誘導体SF07を見出すことができた。 NY52およびSF07の農業害虫に対する効果を調べるために、カイコと同じチョウ目昆虫であるハスモンヨトウとシロイチモンジヨトウに対する生物活性試験を行った。その結果、NY52およびSF07どちらもハスモンヨトウ に対しては生物活性を全く示さなかったのに対して、シロイチモンジヨトウに対しては変態不全や過剰脱皮が認められた。これらの変態異常はJHを処理した際に見られる症状であることから、NY52およびSF07はシロイチモンジヨトウに対してはJH拮抗阻害剤ではなく、JH様活性物質として作用していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度では害虫由来のJH受容体との結合試験を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、共同研究を実施することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
JH受容体との結合試験の構築を最優先に行う。構築後は、これまでに合成したJH拮抗阻害剤ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、得られた結果から構造活性相関解析およびドッキングシミュレーションを行うことで、害虫に対して生物活性を示すJH拮抗阻害剤の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、予定していた実験が実施できなかったため。当該の実験は次年度に実施するので試薬や器具などの消耗品費として使用する
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Research Products
(3 results)