2020 Fiscal Year Research-status Report
カミキリムシ等の食植性昆虫における後天的な寄主選好性決定メカニズムの解明
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20K06079
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| Research Institution | Nihon University |
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Principal Investigator |
深谷 緑 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (80456821)
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2020-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 寄主選択 / 表面粗さ / 植物揮発成分 / 産卵選択 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
カミキリムシ等の成虫の後天的な寄主依存性の成立過程、行動特性の差違を明らかにすることを目指し研究を進めている。なお寄主選好性については様々な様相があり寄主樹木への定位・定着、配偶定位、また産卵選好性、幼虫の摂食、成育等の段階を分けて考えることができる。
今回の材料のひとつゴマダラカミキリは広汎な木本（広葉・針葉樹木）を寄主とするにもかかわらず、幼虫期の寄主により、定位行動を誘導する揮発成分が異なる。本研究では特に寄主として例外的とされる草本植物（イタドリ）から発生した個体に着目、木本（プラタナス）発生個体を比較のため用い、各寄主植物体由来の誘引活性成分の候補物質を複数特定した。各候補成分の合成品（単独）への、成虫の定位反応と寄主による差違を確認した。さらに両寄主共通、非共通成分に加え、植物個体や季節などにより変動する成分について、機器分析データ・行動解析結果を照合し、各成分の機能を検討した。一方、嗅覚以外の感覚情報、とくに振動・視覚依存性と、利用寄主の関係について評価する実験・解析を行い、興味深い結果を得た。
またクビアカツヤカミキリの産卵選好性におよぼす寄主表面構造の解析を行った。本種は他のカミキリ亜科のメス同様、産卵加工せず直接寄主の表面に産卵する。サクラ丸太を既交尾メスに与え、一定期間の後に、個々の卵の産下部位を目視にて特定・分類した。産下部位の樹皮部の粗さを目視評価する基準とするため作成していた粗さグレード見本を形状測定機にて撮影しデータを取得、線粗さ、面粗さ等を評価した。この結果、目視評価による粗さの順位と、面粗さのうち平均高さに関する数値などの順位が一致し、表面粗さと産卵場所としての選好性の関係が明らかになった。さらに特に選好された特定構造部位の表面が、高さ以外の特定パラメーターで一定傾向を呈したことなどから、本種メスの腹部末端での情報受容の重要性が示唆された。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は寄主選好性にかかわる寄主の要因のうち、寄主の揮発成分について、選好性のカギとなる成分・組成の分析を進め、また寄主の樹皮の物理的要因の分析・定性評価方向を確立、産卵選好性と寄主表面構造に関する興味深い結果を得た。しかしその一方で、新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、生物材料（とくにゴマダラカミキリ）採集・調査において協力予定者・共同研究者からの助力が得られず、自分自身による採集・調査の準備期が緊急事態宣言と重なったこともあり、対応に遅れを生じた。さらに実験場所である大学研究室への立ち入り制限がされた時期が、材料発生時期と重なるなどの不測の事態が相次ぎ、実験の一部を予定通り進めることができなかった。
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| Strategy for Future Research Activity |
2021年度は周到に準備のうえ生物材料を確保する予定である。移動を避け発生地に宿泊、早朝に採集・調査することも検討している。密にならない条件の実験場所を設定し、夏期には行動解析実験に集中する。社会的な状況、材料の事情に柔軟に対応し、できることから行程を埋め計画を達成させる。
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| Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、アルバイトなどの雇用を見送った。また発生地での調査なども自粛し回数を減らしたこと、参加予定の学会がオンライン開催となったことなどから旅費の使用額は予定より減少した。さらに実験場所である大学研究室への立ち入り制限の時期、材料発生時期と重なるなどの不測の事態から、予定していた行動解析実験を縮小・一部先送りとし、代わりに外部施設利用による物理的分析、取得データの解析を行うなど、研究工程の実施の順序・手法を変更して研究を進めたが、結果的に助成金使用額が予定より少なくなり、次年度使用額が発生した。次年度使用額は採集・調査、試料分析の費用、また生物・化学実験に使用する試薬・消耗品購入に充てる予定である。
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