2021 Fiscal Year Research-status Report
大型獣がもたらす攪乱は多種共存に貢献するか:縮小社会における再野生化の可能性
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20K06089
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
江成 広斗 山形大学, 農学部, 教授 (90584128)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニホンジカ / イノシシ / ニホンザル / 撹乱 / 多雪 / 採食 / 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
多雪地生態系において、近年になって分布回復が進行するシカ・イノシシ・サルを対象に、当該種の採食に伴う自然攪乱が動物相や植物相の「多種共存」にもたらす影響を抽出することを目的とした各種評価を継続した。 多雪地における木本植物を対象としたシカの採食痕評価は、昨年度と同様に、福島県南会津町(会津高原)にて2022年3月上旬の残雪期に実施した。本評価では、あらかじめ設定したベルトトランセクト(合計130km)を山スキーまたはスノーシューで踏査し、木本植物につけられたシカの採食痕を記録した。その結果、合計で639の採食痕(計69種)の記録に成功した。寡雪年であった2021年とは異なり、豪雪年であった2022年においては、雪の影響を受けにくい樹木(ツル性植物・高木種など)への採食が目立った。 イノシシの掘り起しに伴う動物相・植物相の変化を記録するために、朝日山地において、異なる景観を持つ3つの林分において、120か所の人工掘り起しを2019年に用意した。2021年においても、春季から秋季にかけて、継続的にモニタリング評価(発芽した木本・草本の記録、およびカメラトラップをもちいた哺乳類相評価)を実施し、その変化の記録を継続した。 木本植物を対象としたニホンザルの採食痕評価は青森県西目屋村(白神山地)にて、2022年3月に実施した。当該調査地においても、豪雪がみられた結果、確認できた採食痕数は大幅に減少した一方で、積雪の影響の受けにくい高木種への移行が顕著に観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、調査対象とした東北各地に共通して、顕著な豪雪年であったため、対象種(シカ・サル)採食行動に対して、豪雪環境に適応するための大きな行動変化を観察することに成功した。また、予定していた哺乳類各種の攪乱の発生様式についても順調に記録・モニタリングすることもできた。これらの理由から「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度においても、前年度と同様に、シカとサルの採食痕の記録作業と、イノシシの人工掘り起しサイトにおける動物相・植物相のモニタリング評価を継続する。また、最終年度であるため、各種撹乱がもたらす影響の総合的な評価を実施し、それらを論文として取りまとめていく。あわせて、在来生態系への負の影響が検知される「攪乱脆弱地」の地理的特徴の抽出、さらには攪乱低減措置のコスト評価を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ対応のために、現地フィールドワークに調査協力者を同行させることができず、多くの業務を研究代表者単独で実施する必要があったため、旅費と謝金などに残額が生じた。残額は、2022年度のフィールドワークを効率的に実施するための旅費・人件費謝金として使用したいと考えている。
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