2021 Fiscal Year Research-status Report
環境DNA分析による検出誤差を踏まえた種多様性評価手法の開発と検証
Project/Area Number |
20K06102
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
深谷 肇一 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (30708798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今藤 夏子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (10414369)
角谷 拓 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 室長 (40451843)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境DNAメタバーコーディング / サイト占有モデル / 調査設計 / 魚類群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
野外において生息種を簡便かつ網羅的に把握するための新しい観測手法として、環境DNAメタバーコーディングが広く利用され始めている。しかし、環境DNAメタバーコーディングでは様々な要因により偽陰性と偽陽性が生じ得るため、こうした誤差を適切に考慮するための手法の高度化が求められる。本研究では、環境DNAメタバーコーディングにおける偽陰性の種検出誤差に適切に対処し、正確かつ効率的に種多様性の評価・予測を行うための統計的な枠組みを構築すること、およびそれを簡便に利用するためのソフトウェアを開発することを目的としている。 今年度は、環境DNAメタバーコーディングに固有の種検出過程を表す統計モデルを提案し、霞ヶ浦水系に生息する淡水魚類のデータに適用した研究結果をまとめた原著論文が、国際学術誌に受理・出版された。この研究では環境DNAメタバーコーディングによる個々の種の検出可能性が評価され、種の検出可能性が大きく偏っており、生息種の不検出(偽陰性)を防ぐ上で同一地点から反復して採水を行うことが有効であることなどが明らかとなった。また、本提案手法を簡便に扱うことのできる解析ソフトウェアを統計解析向けのプログラム言語Rの拡張パッケージとして開発し、そのアルファ版を公開した。今後、開発と改良をさらに進めて正式版をリリースする予定である。また、今年度に環境省が実施した環境DNA技術標準化・一般化業務の重点調査データの解析には本提案手法が適用され、「環境DNA分析技術を用いた淡水魚類調査手法の手引き」の改訂に貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の主目的の1つである手法構築と淡水魚群集への適用について、実施2年目の時点で論文として成果をまとめることができた。残る課題であるパッケージ開発についても概ね予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
提案手法に関するソフトウェアの開発と関連論文の作成に注力する。また、提案手法のさらなる拡張や、淡水魚以外の対象への適用についても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症が流行した影響で、参加した学会はいずれもオンラインとなり旅費が発生しなかった。次年度は野外調査や分析費用に利用するとともに、研究論文のオープンアクセス化を積極的に行うなど、効果的な活用を進めていく予定である。
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