2022 Fiscal Year Annual Research Report
古民家を構成する里山資源の利用にみられる伝統的な知識体系とその地域多様性の解明
Project/Area Number |
20K06106
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
井田 秀行 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (70324217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土本 俊和 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (60247327)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 古民家 / 里山林 / 茅場 / 伝統的生態学的知識 / 樹種選択 / 半自然草地 / 農村景観 / 資源循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
農家建築(古民家)は、周りの里山資源が利用され、地域の気候風土に適応し、その土地に立地する上で理想的な形態や構造、機能を有していると考えられる。本研究では、古民家が里山生態系の重要な構成要素であると捉え、それを構成する里山資源、とりわけ木材と茅(イネ科草本)の合理的かつ持続的な利用方法に関する伝統的な知識体系(伝統知)とその地域多様性が生じた要因の解明を目的とした。 福島県只見町・長野県飯山市・広島県北広島町(いずれもブナ帯の多雪地域)に残る古民家の使用木材を同定し、部材ごとの樹種の使い分けの実態を把握した。最終年度は北広島町で1棟の補足調査を行った。結果、3地域ではスギの使用が共通であった一方、只見ではキタゴヨウ、飯山ではブナ・ナラ、北広島町ではアカマツ・クリが主体的に利用されるなど、地域ごとの特性が明らかとなった。また、3地域の森林の主要構成種であるブナの使用は只見や北広島でもある程度確認され、同種は飯山と同様、梁や屋根を支える扠首に選択されていた。これは耐積雪圧の高いブナの特性を活かした伝統的な利用方法として日本の多雪地域を特徴づける生態学的知識と言える。 茅葺き屋根材を産出する富山県五箇山と長野県小谷村の茅場では、それぞれ除草や火入れ管理の頻度や程度が屋根材の品質および茅場の生物多様性に与える影響を把握し、管理の意義について検討した。最終年度は小谷村の火入れ管理下の茅場に防火区を設定し、火入れ区と茅の品質を比較した。結果、火入れ区では開花した稈(屋根茅として丈夫で長持ちとされる)の密度、割合共に高いことが明らかとなった。また同茅場の昆虫相調査を引き続き実施し、3年間で計14目128科505種を記録した。以上から茅の品質維持と生物多様性において火入れが重要な役割を果たしていることが示された。 本成果は、里山資源の循環利用社会の再構築において重要な示唆を与えるものである。
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Research Products
(7 results)