2020 Fiscal Year Research-status Report
樹木の3次元形状からみた都市緑化樹木の風倒危険性評価手法の開発
Project/Area Number |
20K06110
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中村 彰宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20264814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木全 卓 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60254439)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台風 / 都市緑化樹木 / 風倒被害 / 幹折れ / 根返り / 曲げ強度 / 自生種 / 外来種 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、関西地方に甚大な被害を与えた2018年第21号台風による都市緑化樹木がうけた被害データの解析と、幹の強度データ取得のための予備実験、風圧モーメント計測のための予備実験を行った。2018年第21号台風によって風倒木が多数発生した大阪府立大学のキャンパスを対象とした都市緑化樹木の解析では、根返り、傾斜、幹折れの被害が、被子植物よりも裸子植物で高かったこと、根の被害(根返りと傾斜)比率が自生種に比べて、外来種と栽培品種で高かったことを明らかに、針葉樹をはじめとした裸子植物では風倒被害をうけやすいこと、また外来種と栽培品種では自生種に比べて根の被害が発生しやすく、管理や植栽計画において注意が必要なことが明らかとなった。また、既存の文献から材の曲げ強度を入手し、樹種ごとの曲げ強度と幹の被害割合(幹折れ数/全被害数)はロジスティック回帰でき、曲げ強度の大きな固い材、すなわち固い幹をもつ樹種では、全被害に対する幹の被害割合が低くなることを明らかにした。さらに曲げ強度の小さな樹種では幹被害の発生比率(幹被害数/生育個体数)が高く、逆に曲げ強度の大きな樹種では幹被害の発生比率が低くなる傾向がみられ、種ごとの曲げ強度が幹被害特性を説明する重要なパラメータであることが示唆された。また、立木を用いた曲げ試験に関する予備実験を行い、樹種ごとの強度評価手法の確立を目指すとともに、超音波風速計を野外に設置して、風速と樹木の枝の揺れを無降雨時に連続的に計測できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、①.既存の台風によって都市緑地で発生した風倒木の特性評価を明らかにすること、②.強風時における都市緑化樹木の幹の変位量、樹冠や樹幹形状、風速計測による抵抗係数を算出すること、③.幹の曲げ試験によって幹の強度データを実測することと、模擬根系を用いた引き抜き試験によって根系の抵抗力を実測すること、これらの結果をまとめて都市緑化樹木の樹形や根系形状などを考慮した風倒危険性の評価手法を開発することである。①の既存の台風の被害特性評価については幹の強度データが既知である樹種については解析できたため、半分程度は終了した。②の抵抗係数の算出および③の幹強度計測については、予備的な実験ができたが、2020年度のコロナの影響で実験開始が大幅にずれて、本実験を十分に実施することができなかった。③の模擬根系実験については2022年度実施の予定通りである。それゆえ、研究全体の進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、予備実験しかできなかった②の樹冠や樹幹の3次元形状の計測を実施するとともに、強風時の幹の変位量計測を複数個体で実施し、代表的な都市緑化樹木の抵抗係数を算出し、風速や風向などの影響、葉や葉群密度などの影響についても考察する予定である、また、③の幹の曲げ試験による幹の強度データを複数種で取得し、抵抗係数や風速データを用いて、強風による幹折れの可能性(危険度)について考察を進める。さらに、③で得られた幹強度データを用いて、①の既存の台風時の風倒データについて、樹冠や樹高、胸高直径などの個体サイズデータを含めた風倒可能性評価の解析を進める予定である。③の根系実験については最終年に実施し、風倒危険性の評価手法全体についても最終年にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は全体のスケジュールに遅れが生じ、予備実験のみしか実施できなかったため、最小限の風速計やデータロガーを購入しただけだった。さらに新型コロナの影響で十分な調査補助をつけることができなかったこともあり、使用額が予定を下回った。
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