2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the improvement technique of the space value in rural landscape using by native wildflowers.
Project/Area Number |
20K06114
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大澤 啓志 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20369135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 在来野草類 / フラワーツーリズム / 地域活性化 / 群落開花景観 / ハビタット / 地域活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島県喜多方市沼の平地区で展開される,耕作放棄した棚田・段畑跡地を利用してフクジュソウの開花景観を資源として交流人口を確保し,地域への誇りを伴う地域活性化活動の経緯・活動動機を調べた。そこでは来訪者の協力金等の収入を管理作業費に充てていたが,必ずしもフクジュソウの生育地保全に特化している訳ではなく,地区全体の景観保全(集落や耕作棚田,棚田・段畑跡地も含む景観の荒廃抑制)による地域活力維持を標榜している点が特筆された。 カワラナデシコの群落維持機構を把握するため,海岸砂丘の表土内における,種子密度及び種子発芽能を調べた。26地点で計186.5個/㎡の種子が確認され,定温暗条件の後,土壌中の種子が表土攪乱により地表に出たことを模倣し太陽光を当てる変温条件に置くと,累積発芽率は85.6%に増加した。植生遷移により本種のハビタットである草原環境が減少して一時的に生育量を減らしても,埋土種子集団があることで攪乱等の後に新規参入個体を得て,本種は個体群を維持していると考えられた。 ナデシコ類を例に,在来野草類の活用における文化的洗練性について考察した。古典和歌集にはナデシコ類は444歌で詠まれており,美しい花であるとともに,特に思い人を想起する花としてまず登場し,次第に刹那に心動かされる対象としての花へと,向けられたまなざしが変わって来たことを明らかにした。在来野草類を用いた緑化や空間づくりにおいては,日本人との文化的関りについての情報も重要であり,カワラナデシコに代表される日本人との関りの深い「野に咲く和の国の花」すなわち「野・和・花」が措定された。 在来野草類の開花景観に素材としての価値を見出す,あるいはそれらが群生する「空間」自体が地域活性化のために利用できる素材として文化の領域に取り込まれることによる,地域文脈に即した新たな里山の空間的価値の創出について考察した。
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