2023 Fiscal Year Research-status Report
我が国の「納涼」とそれを支える水辺社会に関する近現代史研究
Project/Area Number |
20K06115
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
林 倫子 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (60609808)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 河川 / 納涼 / 風致 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我が国の歴史上にみられた「水辺社会」の一例として、日本各地の水辺に開設されてきた夏季納涼の場に着目する。河川管理者・営業者・利用者という各ステイクホルダーの利害関係をどのような管理・運営によって調整してきたのかという、納涼の場となった水辺をとりまく社会的システムを解明し、今後の「水辺社会」デザインにおいて参照すべき先行事例を蓄積することを目的としている。 2023年度は、前年度までに進めてきた京都鴨川の納涼および風景形成に関する研究成果を、パリ社会科学高等研究院主催のワークショップ「Workshop on the Connections in Water History: France-Japan, Early Modern-Modern, Engineering-History」において発表した。ワークショップにおいては、パリと京都の近代河川空間整備における類似性について議論を行い、国際間比較という視点を得た。 次に、大阪大川納涼については、川での遊びのアクティビティやその取り締まりに関する新聞記事や二次資料の収集を継続した。市内遊所とのつながりからみた大川納涼の位置づけについて、土木学会関西支部主催の「関西土木工学交流発表会」と土木学会景観・デザイン研究発表会にて発表した。 今後は、大阪大川納涼に関する各種資料収集とその分析を進めるとともに、京都鴨川の近代納涼場の変遷と空間整備について、また宇治川の宇治公園形成について、研究成果を査読論文として取りまとめる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度に予定していた内容のうち、京都鴨川および宇治川の研究成果のとりまとめと査読論文執筆については未完成に終わったが、これは、急遽京都鴨川の研究内容を国際ワークショップで発表する機会を得、その準備等に時間を割いたためである。査読論文のとりまとめは2024年度中に行う予定である。 また、2022年度より本格的に着手し始めた大阪大川納涼については、2023年度中に大きく前進し、2度の学会発表を行うことができた。2024年度にはそれをさらに進め、京都鴨川の納涼との比較から時代的変化や地域的特徴についても考察していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度末に、研究期間の1年延長を決定し以下のような計画を立て、かつ、コロナ禍という社会情勢を鑑みて関西圏の対象地に重きを置いた調査計画にシフトさせた。 テーマ1「三都納涼および国内の主要な納涼の場の把握」(2020~2021年度) テーマ2「納涼の場の空間・景観の実態解明」(2021~2023年度) テーマ3「納涼の場の管理・運営・利用面に着目した都市社会学的解明」(2022~2024年度) 京都鴨川および宇治川の研究は、テーマ1~3のすべてについてほぼ完成に近づいているため、研究成果の論文執筆を進めるとともに、2023年度の国際ワークショップで得た河川空間整備の国際比較という視点も踏まえて、内容を充実させる予定である。 大阪大川の研究は、現在テーマ2から3にかけての途上にある。2024年度には継続して調査を進めていく。
|
Causes of Carryover |
2020年度から2022年度までの新型コロナウィルスの感染拡大による出張自粛方針により、関東をはじめとする遠方への出張が難しい時期が続いた。これを受けて、確実な研究遂行を達成するため、全国各地に予定していた研究対象地を関西方面に絞った。これにより、出張旅費や、さらには出張を伴う調査にかかる学生アルバイト謝金の支出額が想定額を下回った。以上が、全体的に予算執行が滞っている理由である。 2024年度は、関西地区内でも濃密な研究成果を上げるために、学生アルバイト謝金や資料購入に充てる予算を増やし、使用していく予定である。また、2020年度から2022年度までに滞ってしまった研究内容と未執行となっている研究費については、今後、1年間の研究期間延長を申請し完遂させる予定としている。
|