2020 Fiscal Year Research-status Report
人工知能を用いた樹木内部欠陥の非破壊診断装置の製作
Project/Area Number |
20K06116
|
Research Institution | Niihama National College of Technology |
Principal Investigator |
和田 直樹 新居浜工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (90632787)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 茂 新居浜工業高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (00413857)
塩貝 一樹 新居浜工業高等専門学校, 電気情報工学科, 助教 (50757664)
玉置 教司 愛媛県農林水産研究所, 林業研究センター, 主任研究員 (40715728)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 樹木 / 腐朽 / 空洞 / 共振周波数 / 人工知能 / 畳込ニューラルネットワーク / 非破壊測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
直径100mm、長さ250 mmの杉の丸太に、直径50mm、30mm、15mmの貫通空洞を加工したものと空洞無しの4種類の試験体を各18本で合計72本製作した。試験体を既存の振動測定基準システムの加振機に載せ、200Hzから10kHzの正弦波振動を与え、試験体上部の振動をレーザドップラー振動計で測定して試験体の振動特性を測定した。空洞の有無と空洞の大きさに対応した特徴的な共振周波数ピークが現れることが明らかとなった。 各試験体の特徴的な振動特性を、横軸を時間、縦軸を周波数、また振動強度を色の違いとして画像化した72枚のスペクトログラムを作成して、人工知能の手法の1つである畳込ニューラルネットワーク(CNN)に入力した。69枚をCNNの深層学習データとして、残り3枚をテストデータとして試験体形状を判定する24分割の交差検定を行った。10回の平均で、直径50mmの空洞を持つ試験体の判定正答率は95%、直径30mmは76%と高い正答率が得られた。直径15mmは38%、空洞無しは53%となり、直径15mmと空洞無しの間で誤判定が多くなっていた。このように、倒木の恐れがある大きな空洞を持つ樹木に対しては、樹木の振動特性を用いたCNN判定で空洞を検知できる可能性を示すことができた。 一方、実際の立木の測定には上述の振動測定基準システムではなく、携帯型の測定装置の開発が必要である。加振部はパソコンで発生させた周波数掃引信号でボイスコイルを振動させ、針を通して試験体を加振した。加振信号は圧電素子でモニタした。受振部は、針を通して圧電素子で振動をとらえ、パソコンに入力し、周波数に対する振動強度を測定した。試作した携帯型装置を用いて、直径50 mmの空洞を持つ試験体を測定して、振動測定基準システムと比較した結果、ほぼ同等の振動特性が測定でき、携帯型装置製作の可能性も示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の目標は以下の3つである。1)樹木の試験体の数を増やして、空洞の有無・大きさが異なる試験体の特徴的な共振特性を明らかにする。2)その特徴的な共振特性から人工知能の手法の1つである畳込ニューラルネットワーク(CNN)を用いて試験体の空洞の有無・大きさを判定する。3)実際の立木の測定に使用するための携帯型測定装置の試作を行う。 1)については、合計72本の試験体を製作して、振動測定基準システムを用いて、空洞の有無・大きさが異なる試験体の特徴的な共振特性を明らかにした。2)については、72本の試験体の振動特性を表すスペクトログラムをCNNに入力して、試験体の形状を判定したところ、直径50mmの空洞を持つ試験体の正答率は95%、直径30mmは76%と高い確率で試験体の形状を判定できることがわかった。3)については、加振部にボイスコイルを受振部に圧電素子を用いて、ソフトウェアによってパソコンでデータ処理する携帯型装置を試作して、振動測定基準システムと比較した結果、ほぼ同等の振動特性が測定でき、携帯型装置製作の可能性を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
携帯型装置の試作品を用いて、振動測定基準システムとほぼ同等な特性測定ができるようになった。そこで、今年度は振動測定基準システムを用いてスペクトログラムを作成したが、令和3年度は、試験体用の携帯型装置を完成させて、携帯型装置を用いてスペクトログラムを作成して、CNNに入力して試験体形状の判定を行う。また、CNNの判定精度がより高くなるスペクトログラムの画像化手法を検討する。 また、実際の立木の加振用に、加振能力を増大させた携帯型装置の試作を行う。 そして、令和4年度は、森林で空洞などの内部欠陥を持つ腐朽木を探し、樹皮の付いた丸太に切断して、実際の腐朽木の試験体を用いたCNNによる深層学習を行う。そして、最終的には実際に立木の内部欠陥の判定を行う。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、加振受振部を企業から購入して、その解析用のCNN用ソフトウェアを本研究用に独自にライセンス購入することを想定していたが、判定性能向上を目的に、携帯型測定装置を学校内で自主開発する方針に切り替えた。その結果、CNN用ソフトウェアも学校の包括ライセンスが使用できるようになり、加振受振部購入とライセンス購入費用が必要なくなったため、次年度使用額が生じた。ただし、これらの費用は、令和3年度以降に自主開発する携帯型測定装置用の加振器、受振器、パソコン、アンプ、AD変換器などに充てる。また、コロナ禍により出張の自粛や学会への参加旅費が必要なくなったため次年度使用額が生じた。旅費は今後コロナ禍後の積極的な研究や広報活動に使用する。その他、コロナ禍のため学校が遠隔授業対応となり、研究協力者である専攻科生が登校禁止となったため、本格的な実験開始が半年遅れの9月となってしまったことも次年度使用額が生じた理由である。
|
Research Products
(3 results)