2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K06122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 陽子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00302597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒河内 寛之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00609000)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 立地環境 / 環境DNA / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は水由来の環境DNAから樹木のDNAが検出できるかを実験系で検証した。また生態ニッチモデリングにより、房総半島南東部におけるアサダの生育適地を推定した。 環境DNAについては、東京大学小石川植物園内のアサダ、イチイガシ、イロハモミジの3種の葉を樹上から採取し池水を採取した。6処理区を設け、処理区1~4では1Lビーカーに3樹種の葉を大きさや枚数を変化させて投入した。処理区1、2、3、5には500μmの篩で濾した池水を、処理区4、6は篩で濾したのちに120℃20分で滅菌した池水をそれぞれ900ml入れ、25℃一定条件下で撹拌し続けた。1週間毎に各ビーカーから投入した枚数の1/3の葉を回収すると共に、残渣を含む溶液を120mlずつ回収し-80℃で保管した。投入する前の葉と、投入から1、2、3週間後に回収した葉について葉面積と乾重を測った。その結果、投入される葉が多いと葉面積の減少は小さかった。いずれの処理区でもイチイガシは最も葉面積減少が起こりにくかった。葉の乾重量は全ての樹種、処理区で経時的に減少していた。回収した溶液について、①そのまま、②濾過処理後の濾液、③濾過処理後の残渣に分けて環境DNAの抽出を試みた。抽出したDNAをテンプレートとして、既存の核SSRマーカーを各種2座ずつ用いてPCRを行い、DNA検出が可能か確認した。その結果、③40mlの溶液濾過した残差を用いた場合にのみ、アサダとイロハモミジを検出できた。 生態ニッチモデリングでは、ArcGISを用い、10mDEMから傾斜、方位、標高、曲率の4つの指数を算出し、地形要因とした。既知のアサダの生育地7か所の位置データを用いてMAXENTにより分布確率を推測した。その結果、標高が貢献度64.2%, 重要度66.9%となり、分布を主に規定していることが示唆された。また、分布確率が高い場所が対象地域内に多く存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、コロナ感染症拡大に伴う活動制限により、屋内における実験および屋外における調査の開始時期が遅れた。また同時に、予定していた調査地やサンプリング回数を変更せざるを得なかった。屋内における実験開始が遅れたことにより、遺伝マーカーの開発に遅れが出ており、既存のSSRマーカーで代替している。また予定していたアサダの生育地の土壌サンプリングや水のサンプリングは困難であった。そのため、調査地を変更して都内の植物園の植栽されたアサダから葉のサンプリングを行い、実験室内で実験的に水中での葉の分解や水の採取を行うことで代替している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、環境DNAを検出するための遺伝マーカーの開発を引き続き行う。特に葉緑体DNAマーカーの開発に着手する。また、現地での土壌や水の採取を行う。さらに、生態ニッチモデリングによる生育地推定の精度をあげるために、航空写真の利用または千葉県以外の地域におけるアサダの生育地データの追加も検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により調査、実験開始が遅れ、計画通りに進まなかったため次年度使用額が生じた。次年度、現地調査、サンプリングおよびDNAマーカーの開発に用いる。
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