2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 陽子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00302597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒河内 寛之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00609000)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境DNA / 核SSRマーカー / 葉緑体DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、樹木を検出できる可能性がある水および落葉サンプルからの環境DNAを対象とした解析方法を検討した。 2020年度の結果から、種数を限定した水サンプルを想定した実験系で核SSRマーカーでの樹木種の検出が示唆されたが再現性に乏しかったため、2021年度は葉緑体DNAに着目した解析を開始した。ジーンバンクへの登録数が比較的多い複数の座の増幅を行い、良好な増幅結果を得た。水サンプルに加え落葉サンプルからのターゲット種が検出可能かについても検討した。樹種特定が不可能な状態の落葉からDNAを抽出し核SSRマーカーで増幅確認をし、水サンプルよりも安定した結果が得られた。しかし、水サンプルの濃縮プロセスとは異なり、落葉はサンプルの一部を取り出す必要があり、どの程度の範囲からどの程度の量を採取するかの検討が必要であった。さらに、屋外サンプルとしてイロハモミジとアサダの落葉の入水が確認されている池から採水したサンプルを500ml、1L、5L、10Lずつ脱脂綿を用いてろ過した後、脱脂綿上の残渣からDNAを抽出した。抽出DNAをテンプレートとして、ビーカーを用いた実験系で利用した核SSRマーカーと、葉緑体の3領域のプライマーを用いてPCRの増幅確認を行った。1Lと5Lの残渣由来のDNAを用いた場合は葉緑体の3つの領域のみでPCR増幅が確認された。500mlと10Lのろ過残渣から得られたDNAをテンプレートにした場合、1つまたは2つの葉緑体の領域しかPCRの増幅確認ができなかった。核SSRマーカーに関しては、一部のサンプルでPCR増幅はしていたが、期待長のPCR増幅は確認できなかった。ビーカーを用いた実験ではほぼすべての試験区から葉緑体のプライマーを用いたときのPCR増幅が確認されたが、一部増幅しない実験区もあり、溶液中の葉緑体DNAの存在量に大きなばらつきがあることが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度に引き続き、コロナ感染症拡大に伴う活動制限により、予定していた調査地の変更やサンプリング回数を削減せざるを得なかった。サンプリングを予定していた、東京大学千葉演習林のアサダ生育地へは下見に行くことができたが、台風被害により林分が破壊されており、また調査地への歩道が不通で復旧の見通しが立っていないことが判明し、調査を行うことができなかった。 そのため、引き続き調査地を変更して都内の植物園のアサダ植栽地で葉のサンプリングを行い、実験室内で実験的に水中での葉の分解や水の採取を行うことで代替している。
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Strategy for Future Research Activity |
種特異的な核DNAに着目した検出方法についての知見を得るとともに、葉緑体やリボソームなどのユニバーサル領域に着目した環境DNAからの樹木種の検出方法について効果的な手順を検討し、屋外での応用可能性を探る。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は4万円弱であり、遺伝分析にかかった費用の軽微な差である。次年度の遺伝分析の際に、併せて使用する。
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Research Products
(1 results)