2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06122
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 陽子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00302597)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒河内 寛之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00609000)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 環境DNA / 希少樹木 / 生育適地 / 種特異マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
千葉県全域を対象とし10mメッシュ数値地図より標高・方位・傾斜・地表面の曲率を算出し、MaxEntを用いてアサダの生育適地を推定した。その結果、標高300m以上、北西斜面、傾斜35度以上、曲率-1.0×1011以下の立地条件が適していることが示唆された。これらの条件を満たす地点は千葉県内の主に南部の山地域に広く存在していた。次にSentinel 2の早春のデータよりNDVIを算出し、早春に植生の少ない地域、すなわち市街地や作付け前の田畑および落葉樹林、裸地を抽出した。上記MaxentとNDVIの結果を重ね合わせることにより、アサダの生育適地でありかつ落葉樹林であると考えられる場所が抽出された。その結果、これまで地域内で詳細にアサダの生育個体調査が行われている東京大学千葉演習林およびその周囲を除いて10地区がアサダの生育する可能性がある箇所として推定された。 環境DNAからのアサダDNAの検出については、アサダおよび対照としている常緑樹イチイガシ、落葉樹イロハモミジについて、リアルタイムPCRで検出できる核DNAおよび葉緑体DNAの種特異的マーカーとプローブの開発を試みた。アサダについては、核ITSマーカー1つ、葉緑体マーカー1つの計2つ、イロハモミジについては葉緑体マーカー1つ作成することができた。これらのマーカーは他2樹種のDNAを混合しているときにも正確に反応し、他2樹種のみのDNAに対しては反応しないことが確認できた。また、デジタルPCRを用いてDNA抽出液の1/10,000希釈溶液でも検出が可能であり、アサダおよびイロハモミジの2種を同時に検出することもできた。このことから、環境DNAから樹木種の存在を検出するのに開発したプライマーが有効であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染症の蔓延防止のために子の学級閉鎖に伴い自宅勤務を余儀なくされたり、研究分担者とその家族が感染したことなどにより、調査実験に遅延が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、生育地推定については、令和4年度に千葉県におけるアサダの生育地として推定された10地区を実際に順次踏査しアサダの生育の有無を確認する。 環境DNAからのアサダの検出については、アサダの葉を水の中で分解させた溶液から検出可能であるかを検証し、水からのDNA抽出方法について検討を行う。またアサダが隣接地に生育している止水域の水に対し令和4年度に開発した種特異マーカーでアサダDNAが検出できるか検証する。その際、検出のための環境水からの採取・抽出法および時期も検討する。さらに東京大学千葉演習林のアサダ生育地およびその流域下流において水を採取し、アサダのDNAを検出することができるか検証する。また開発したアサダの種特異的なマーカーは、日本の他地域の個体においても有効であるか、について全国各地のアサダDNAを用いて確認をする
|
Causes of Carryover |
コロナ感染症の蔓延防止のために子の学級閉鎖に伴い自宅勤務を余儀なくされたり、研究分担者とその家族が感染したことなどにより、調査実験に遅延が生じた。そのため、次年度使用分が生じた。次年度使用分は、推定されたアサダ生育地の実際の踏査のための旅費および環境DNAの検出実験試薬に用いる。
|