2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on the spatial distribution of water flow path within the soil layer in mountainous hillslopes
Project/Area Number |
20K06125
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正岡 直也 京都大学, 農学研究科, 特定助教 (90786568)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 水みち / 圧力水頭 / 飽和透水係数 / ゲルフパーミアメータ / 集水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は第一に、滋賀県大津市不動寺水文試験地内の斜面末端部で過去に行った土壌圧力水頭の観測結果を解析し、降雨時の飽和維持時間の長短を調べた。この飽和維持時間が短いほど土層内の水みちによる排水構造が発達していることを意味している。結果、飽和維持時間の短い地点が斜面内で連続的に繋がっており、水みちの存在を示唆していた。また全水頭や土層内温度の解析も行い、飽和帯が基岩地下水の湧出によって形成されたものか否かを調べた。この結果、解析対象の飽和帯はすべて降雨浸透により一時的に形成されたものであると分かった。 第二に、同じ斜面で土層に開けた孔にマリオットボトルと同じ構造を持ったパイプを挿入し、非破壊的に目的深度の飽和透水係数を計測できるゲルフパーミアメータ法試験を行った。その結果、降雨時の飽和維持時間が短い地点ほど飽和透水係数が大きい傾向が明確にみられた。さらに基岩面地形の集水性(Topographic index)を計算したところ、飽和透水係数が大きい地点ほど集水性も大きい傾向がみられた。これは、長期間選択的に水が集まることによって細かい土壌の洗脱が起こり、水みちが形成された可能性を示唆している。以上から、山地斜面土層内の透水性は空間的に不均質で、連続的に透水性の高い部分が排水能力の高い水みちとなっていることが観測により明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は社会的状況から野外の測器設置ならびに観測を満足に行えなかったものの、代わりに既存データの解析により、土層内に存在する水みちのシグナルとなる圧力水頭の反応を特定することができた。また、土層内で任意の深度における飽和透水係数を測定するゲルフパーミアメータ法が水みち探査において有効なツールであることが証明された。また野外観測に用いる自作データロガーの製作ならびに試験を行い、十分な性能を有することが分かった。このように次年度にテンシオメータを設置した降雨浸透の観測を行っていくうえで十分な準備ができており、進捗は概ね順調であるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
観測地にテンシオメータを設置し、降雨浸透の観測を主に進めていく。具体的に、滋賀県大津市不動寺水文試験地(花崗岩)と滋賀県甲賀市信楽水文試験地(堆積岩)の2流域において、貫入試験による土層厚の計測とゲルフパーミアメータによる飽和透水係数の計測の後、テンシオメータを流域内で離散的に設置して水みちの分布状況を比較する。流域末端で流量観測ならびに水質観測を行い、降雨時に水みちによる素早い流出の寄与がどの程度含まれているかを把握する。観測流域の数値地形データ(1mメッシュ)をもとに地形解析を行い、各種の地形量と水みち分布を比較して、水みち予測モデルの検討と最終的な分布型流出予測モデルの構築に向けた知見の蓄積を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度の春から夏にかけて、社会的状況から野外の測器設置ならびに観測を満足に行えなかったため、物品費の多くを占めるテンシオメータとデータロガー部品の購入を見送った。その間に既存の観測データを用いた解析を行い、秋から冬にかけてゲルフパーミアメータを用いた現地の土壌透水性計測を主として行った。 次年度はテンシオメータとデータロガー部品を購入し、予定していた野外の測器設置ならびに降雨浸透過程の観測を行う予定である。
|