2020 Fiscal Year Research-status Report
人為攪乱はシカの森林動態への影響を促進・抑制するか?-大規模長期操作実験での検証
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20K06138
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日野 貴文 北海道大学, 農学研究院, 研究員 (70567453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60285690)
日浦 勉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70250496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニホンジカ / 人為攪乱 / 累積効果 / 林床植物 / 種多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、COVID-19の影響により予定していた野外調査を縮小せざるを得なかった。そのため、2020年度は過去のモニタリングデータを対象にしたデータ解析を中心に研究を進めた。次年度以降の植物種ごとのシカ密度と人為攪乱への応答を検証する事前解析として、初年度はシカと人為攪乱が林床植物の出現種数に与える影響を把握することを目的とした解析を行った。全分類群および6つの生活型毎(木本、草本、シダ、グラミノイド、不嗜好植物)の出現種数を対象にシカ密度と人為攪乱への応答を検証した。具体的には、出現種数を応答変数とし、シカ密度と人為攪乱及びそれぞれの交互作用項を独立変数とした。独立変数は、シカや人為攪乱が毎年一定量の影響を与えるとするパラメータと、経年的にその効果が増大あるいは減少するとするパラメータ(累積効果)を考慮した。そして、独立変数がとり得る全ての組み合わせの統計モデル(全52モデル)を構築し、ベイズ推定によるパラメータ推定とモデル選択を実施した(計算時間: PC2台約3週間)。解析の結果、伐採はシカ高密度による種数減少を緩和することが一部の分類群において検出された。また、シカ密度と人為攪乱の多くについて、経年的にその効果が増大する統計的に有意な蓄積効果が検出された。野外調査によるデータ取得は、2005年より継続的に4~5年おきに実施している毎木調査を2020年も実施した。また、シカ密度を一定に保つなど大規模野外操作実験の設定を維持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により予定していた野外調査を縮小して実施することになった。また、2020年度は代表者が5か月間育休取得のため研究を中断しており、進捗に遅れがでた。
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Strategy for Future Research Activity |
一部の分類群では種多様性に対して、伐採がシカ高密度の負の効果を緩和することが明らかになったため、植物の現存量に対しても同様の効果があるかを2020年度に用いた統計モデルを適用して検証する。そして、どのような特徴をもつ林床植物が、「シカ高密度の種数減少を伐採が緩和」しているというパターンに寄与しているのかを検証するための、機能形質のデータを整備し、解析する。また、成木ステージにおける樹木の生死・成長に対する、シカや人為攪乱の効果を検証する解析を進める。
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Causes of Carryover |
2020年度上半期はCOVID-19の影響により出張ができず、下半期は代表者が育児休業を取得していたため、旅費の多くを執行できなかった。COVID-19の影響により予定していた野外調査を縮小して実施することになり、アルバイトの雇用もできず人件費を執行できなかった。旅費については、当初予定していた野外調査や学会発表を2021年度もしくは2022年度に行い執行予定である。人件費については、データ解析を進めるに従って野外調査だけでなく、モニタリングデータの精査と整理にアルバイトを雇用する必要性があることが判明したため、2021年度以降にデータの整理のためのアルバイトも雇用する。
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