2022 Fiscal Year Research-status Report
人為攪乱はシカの森林動態への影響を促進・抑制するか?-大規模長期操作実験での検証
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20K06138
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
日野 貴文 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究職員 (70567453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60285690)
日浦 勉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70250496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニホンジカ / 人為攪乱 / 累積効果 / 林床植物 / 種多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までのデータ解析に加え、シカと人為攪乱が林床植物の種多様性とバイオマスに与える影響を分析対象とする生活型を拡張して検証した。その結果、高木の稚樹、低木、木性ツルは草本植物やシダに比べて、シカ高密度による負の影響を強く受けていた。また、高木の稚樹はシカを排除することで実験開始後5年後以降急速にバイオマスを増大させていた。これらは、落葉広葉樹林において草本植物は冬季に地上部が枯れる種が多く冬季にシカの採食から逃れることができるのに対し、木本植物は冬季もシカの採食圧にさらされるからだと考えられた。これらの結果と前年度までに得られた結果を論文にまとめ、国際誌に投稿し受理された。 出現頻度やバイオマスをもとにした群集の非類似度から、シカ密度や人為攪乱が林床植物の群集組成に与える影響を分析した。その結果、シカ低密度区の人為攪乱なしの調査区と比較すると、シカ高密度区では実験開始後の経過年数に応じて群集の非類似度が大きくなっていた。特に、シカ高密度に加え伐採と窒素負荷が実施された調査区では群集組成の変化が顕著であった。伐採と窒素負荷されたシカ高密度区ではシカの不嗜好種のうち2種のバイオマスの増大、およびシカの嗜好種である草本種の減少が、そのような伐採と窒素負荷されたシカ高密度区における群集組成の変化に大きく貢献していることが明らかになった。シカ排除区においても群集組成の変化は見られたが、シカ高密度に比べるとその変化は小さく、人為攪乱との交互作用は検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により予定していた野外調査を縮小して実施することになった。また、2020年度に代表者が一時期育児休業のため研究を中断していた。
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Strategy for Future Research Activity |
成木ステージにおける樹木の生死・成長に対して、林床植物において検出された人為攪乱によるシカの影響への緩和・促進の効果を検証する。検証の際には、林床植物の解析に用いたシカ密度と人為攪乱及びそれぞれの交互作用項を独立変数とする、状態空間モデルを適用する。このモデルでは、シカと人為攪乱の効果を毎年一定だけではなく、操作実験後の経過年数に伴いその効果が増減することを考慮する。また、樹木個体サイズや種間差のパラメータもモデルに導入する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響によりこれまで出張や野外調査を縮小することになり、研究に遅れが生じた。さらにこれまで参加した学会はオンサイトでの開催が中止され、web開催になったため旅費に余剰が生まれた。2023年度の出張・野外調査・英文校正・論文投稿料にて執行予定である。
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Research Products
(1 results)