2022 Fiscal Year Research-status Report
樹木における心材形成様式の種特性の解明と心材腐朽菌類の感染経路の特定
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20K06141
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
梅林 利弘 秋田県立大学, 生物資源科学部, 特任助教 (20585997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 利博 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30332571)
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
山田 晋也 静岡県農林技術研究所, 静岡県農林技術研究所, 上席研究員 (20502579)
野末 尚希 静岡県農林技術研究所, 静岡県農林技術研究所, 主任研究員 (80738493)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 木部の老化 / 柔細胞 / タラノキ / ヌルデ / ヤマザクラ / ミズナラ |
Outline of Annual Research Achievements |
落葉広葉樹の樹幹における心材形成機構を明らかにすることを目的とし、緯度の異なる国内3地域(北海道足寄町、埼玉県秩父市、静岡県浜松市)の苗畑に植栽された広葉樹4種(タラノキ・ヌルデ・ミズナラ・ヤマザクラ)を対象に、生育調査を行うと共に、組織学的手法を用いて木部の生理変化を検討した。その結果、植栽2年目(2022年)においても、4種の樹高と地際直径は浜松の個体が最も大きく、足寄の個体が最も小さい傾向を示した。足寄におけるタラノキとヌルデは5月に地上部が枯れたが、その後に萌芽成長し、樹高と地際直径は昨年度よりも大きかった。樹種毎の地際付近における主幹を対象に、髄付近における木部の着色の有無を肉眼で観察した結果、タラノキだけでなく、秩父・浜松のヌルデと足寄のヤマザクラにおいても認められた。一方、秩父・浜松のヤマザクラと全地域のミズナラに関しては、着色された木部は認められなかった。 木部の水輸送経路を染色液吸引法により可視化するとともに、木部切片における柔細胞のデンプンと核の有無を検討するために、ヨウ素液とDAPIを用いて顕鏡した。その結果、いずれの樹種においても、樹皮側の木部は、道管による水輸送がなされており、柔細胞はデンプンと核を含んでいた。一方、着色域の木部では、水輸送機能が失われていた。タラノキはデンプンも核も認められず、ヌルデはデンプンがほとんど認められなかったが、いくつかの細胞では核が認められた。ヤマザクラは、樹皮側の木部よりもデンプン数は減少したが、着色域でも大半の柔細胞でデンプンが認められた。これらの結果から、広葉樹の着色された木部は、通水機能の停止と柔細胞の老化が起きており、樹種毎や地域毎でその老化特性が異なることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タラノキは着色心材を確認でき,ヌルデ・ヤマザクラも木部の着色が認められ、着色域における柔細胞の老化が認められた。そのため、心材形成を解明するために必要な樹種の選定や試料の入手が可能になった。さらに、秩父・浜松のタラノキ・ヌルデを対象に、地際付近に心材腐朽菌類の一種であるナミダタケモドキの接種試験を行ったため、心材腐朽に関する研究も行うことが可能になった。また、足寄のタラノキ・ヌルデは地上部の枯れが毎年起きていたため、寒冷地における2種の木部の老化に関する知見が不足していた。そこで、秋田県大潟村(秋田県立大学アグリイノベーション教育研究センターの圃場)に4種を新たに植栽し、今後は寒冷地における心材形成の種特性に関する知見の蓄積も可能になると考えているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
着色域が観察された足寄のヤマザクラ、秩父・浜松のヌルデに関しては、着色域にて木部の老化が進行し、柔細胞の核が無くなり心材が形成されると予想している。そこで、木部の着色域が心材となる季節やその環境要因を特定するために、今後も試料採取・組織観察を継続する。浜松・秩父のタラノキ・ヌルデに関して、着色域に心材腐朽菌(ナミダタケモドキ)の接種試験を行っており、接種の影響を評価する。大潟の植栽木に関しては、4種とも地上部が枯れていなかったため、寒冷地における種毎の心材形成の種特性を組織学的手法により検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は心材腐朽菌類の接種試験を行うことができ、次年度に複数の地域で試料採取を行う必要があるため。
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