2020 Fiscal Year Research-status Report
微量窒素同位体比分析を用いた北方林生態系における樹木の硝酸態窒素利用実態の解明
Project/Area Number |
20K06142
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小田 あゆみ 信州大学, 学術研究院農学系, 助手 (40571609)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 窒素同位体比 / 硝酸態窒素 / 窒素利用 / 北方林 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最新の同位体分析手法を用いて北方林生態系における硝酸態窒素の生成実態と、植物の窒素源としての重要性を解明することを目的としている。植物が土壌から吸収利用しやすい窒素の形態は、主にアンモニア態と硝酸態の2つであるが、従来の土壌分析法では北方林などの低温環境下で硝酸態窒素の濃度が低いことなどから、硝酸態窒素が樹木の重要な窒素源であるとは考えられていなかった。本課題では、硝酸態窒素が液胞に蓄積可能である点に着目し、葉内に硝酸を多く含む樹種をスクリーニングし、その量と同位体比から、窒素源としてどのように利用されているかを明らかにする。 R2年度は、北方林の南限であり、北方林を構成するモミ属、マツ属、カラマツ属、カンバ属など複数の樹種の葉を採取することができるモンゴル国立大学のUdleg演習林において、どのような樹種の葉に硝酸態窒素が存在するか、スクリーニング調査を行った。その際、従来の手法よりも硝酸態窒素の抽出効率が高い凍結融解法を採用するなど、手法の改良も行った。高木だけでなく、低木種も併せて調査したところ、カラマツやカンバなどの高木落葉樹で高い傾向があった。土壌中に存在する硝酸態およびアンモニア態窒素の濃度も調べたところ、高木が生育する環境下ではアンモニア態窒素が多いのに対し、低木が優占する環境では相対的に硝酸態窒素が多く、樹木の生活形による窒素源の違いがある可能性も考えられた。R3年度は、葉に硝酸態窒素を多く含む樹種について、硝酸態窒素の同位体比測定をおこない、硝酸態窒素の生成過程や樹木の窒素源としての重要性について検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においてR2年度に予定していた、北方林の主要構成樹種の葉内硝酸濃度のスクリーニング調査は、既存サンプルを用いることにより達成されている。新型コロナウイルス感染症の流行により、調査予定地のモンゴル国への渡航ができない中、信州大学が持つ山岳地域の演習林を活用し、北方林構成樹種と共通したモミ属、マツ属、カラマツ属、カンバ属 などをサンプリングし、葉内硝酸濃度の測定を行うなど、既存試料の分析と代替試料の分析を組み合わせながら、研究計画は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度も新型コロナウイルス感染症の影響は継続することが予想され、モンゴル国での試料採取が難しい可能性が高い。そこで、信州大学の山岳地域の演習林を活用し、亜高山帯から北方林構成樹種と近縁の樹種を用いた調査を進める。
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Research Products
(1 results)