2021 Fiscal Year Research-status Report
強度間伐による生物多様性と生態系機能の向上はいつまで持続するのか
Project/Area Number |
20K06143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
城田 徹央 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10374711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 哲郎 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00194374)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スズタケ / 生物多様性 / バイオマス / 間伐 / 強度間伐 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度までに強度間伐の特性を明らかにするためバイオマス推定を行ってきた。得られた結果を通常間伐のそれと比較するため,通常間伐(30~35%間伐,列状間伐を含む)が行われたヒノキ人工林との比較を行った。調査を行った12林分は間伐経過年数が0から25年のものを含む。通常間伐を実施した林分では,スズタケが優占した。間伐後15年経過林分ではスズタケの群落高が高かったが,10年を超えると広葉樹がスズタケの上に伸び,混在するようになった。 強度間伐試験地でもスズタケの分布は認められるが,明らかに広葉樹の成長が卓越する。スズタケは林床の光環境を制限し,その生物多様性を低下させる傾向がある。そのためスズタケよりも広葉樹の成長を促進する強度間伐は,ササ型林床の本演習林において,生物多様性を高める有効な施業になりうることが示唆された。 一方,間伐後23年が経過した強度間伐試験区の低木バイオマスが4.2 ton/ha程度であるのに対し,間伐後20年が経過した通常間伐の低木バイオマスは8.3 ton/haであり,スズタケによるバイオマス蓄積量は少なくないことが明らかになった。これまでに報告された間伐後10~15年が経過したヒノキ人工林の低木層バイオマスも1~8 ton/haであることから,本試験地は比較的多くのバイオマスを蓄積していることになる。 以上をまとめると,強度間伐試験地では低木層が空間的に発達し,種多様性も高い一方で,バイオマスはスズタケを主体とする通常間伐の低木層の方が多くなることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
強度間伐試験区の毎木調査が順延された点では計画よりもやや遅れていると判断される。一方,強度間伐試験区の特性を明らかにするために,通常間伐との比較を実施し,より包括的に議論が可能になった点は大きい。包括的にみると,本来の目的であった強度間伐効果の継続年数の評価がより定量的にできることになったため,当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本試験地において2022年度9月に定性間伐が実施されることとなった。この間伐前のデータを確実に収集することで,低木層発達後の間伐効果をさらに評価できる可能性がある。また作業道が敷設されることから,生物多様性に対する効果も評価できるようになるだろう。 2022年度には,これらの効果を調べるために長さ120m,幅10mのベルトプロットを6本設置する。ベルトプロット内の低木種等の毎木調査によって下層のバイオマスの推定を行う。これらの結果を,2021年度の通常間伐の結果,および2020年度までの強度間伐の結果と比較することにより,強度間伐の長期効果を実施する。
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Causes of Carryover |
2021年にコロナパンデミックによる活動制限により調査が予定通り進まなかったため,2022年度に延期したため。
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Research Products
(7 results)