2022 Fiscal Year Research-status Report
強度間伐による生物多様性と生態系機能の向上はいつまで持続するのか
Project/Area Number |
20K06143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
城田 徹央 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10374711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 哲郎 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00194374)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 強度間伐 / 生物多様性 / 低木種 / 光環境 / ヒノキ人工林 |
Outline of Annual Research Achievements |
①2021年12月に昆明モントリオール生物多様性条約が採択され、生物多様性の保全がより重要視されるようになった。一方人工林は日本の森林面積のうち約4割を占め、人工林の生物多様性保全は無視できないものとなっている。本研究では強度間伐後27年間のモニタリングを実施してきた林分で,林冠閉鎖後の低木種の挙動を明らかにした。 ②信州大学農学部手良沢山演習林の強度間伐モニタリング試験地に幅10 m,長さ120 mのベルトプロットを設置し,高さ2 m以上の樹木の毎木調査を行った。 ③確認された種数、個体数はそれぞれ42種、1408個体であった。このうち出現頻度25%以上、10%以上の種はそれぞれ9種、16種であった。最も出現頻度が高かったのはムラサキシキブの85%であり、次いでクロモジの72%、キブシの63%、ミヤマハハソの60%、サンショウの34%であった。 ④出現頻度10%以上の樹種16種について、空間分布の違いにより主に2つのタイプに分けられた。クロモジ、マルバアオダモ、ウワミズザクラ、アオハダ、ツノハシバミ、ダンコウバイ、チョウジザクラをタイプAとした。ムラサキシキブ、キブシ、ミヤマハハソ、ミズキ、アブラチャン、サンショウ、ホオノキをタイプBとした。またアワブキとミヤマザクラをその他とした。タイプAの個体数は光環境と相関を示し(図4)、明るいコドラートに出現した(図5)。タイプBの個体数は光環境と相関を示さず(図4)、明るいコドラートと暗いコドラートに共通して出現した(図5)。そのため、明るいコドラートでは両タイプが共存し多様性が高く、暗いコドラートではタイプBのみが優占し多様性が低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
毎木調査を完了したため当初の目的とするデータを撮り終えた。また,林内光環境の調査を完了した。一方で作業道敷設が始まり,その影響評価を行う必要がでてきた。このため取りまとめの時間を十分に確保できず,取得したデータの解析が予定ほど進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
①作業道敷設が始まり,林内光環境が変化している。敷設後の光環境を計測し,敷設前と比較することでそのインパクトを定量的に評価する。また,応答性の高い林床植生の調査を70カ所で行うことで,作業道に近いところと遠いところの林床植生の変化を明らかにする。 ②昨年度までに取得したデータの解析を行う。広葉樹樹種の分布特性について,大まかな傾向の把握はできている。今後,種ごとに光環境への応答を定量的に解析し,とりまとめる。 ③もうひとつは上層のヒノキを含めた生産性の解析である。2011年から2019年にかけて林分全体のNPPは増加したが,それはヒノキのNPPが高かったためであり,林床低木のNPPはむしろ低下する傾向にあった。ここではその傾向が続いているのかどうかを明確にし,強度間伐の長期的な炭素固定機能へ与える影響と林床低木の寄与を評価することで,生物多様性が人工林の炭素固定機能に及ぼす影響を考察する。
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Causes of Carryover |
1)コロナの影響のため学会がオンライン開催となった。 2)当該調査地において作業道が開設されるため論文執筆が遅れ投稿が進んでいない。
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Research Products
(4 results)