2021 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子破壊手法を用いた外生菌根菌ホンシメジの共生メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K06148
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
泉津 弘佑 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (20579263)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 外生菌根菌 / 遺伝子破壊 / ホンシメジ / セノコッカム / 全ゲノム比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の菌根性担子菌類および腐生性(非菌根性)担子菌類の全ゲノム比較の結果、菌根性担子菌類の多くが分泌型の植物細胞壁分解酵素をコードする遺伝子群を欠損していることを見出した。この結果は、菌根菌の進化において「植物への攻撃性」を失うことが重要であったことが強く示唆している。この仮説を検証するために、外生菌根菌ホンシメジが進化的に欠損している細胞壁分解酵素を遺伝子組換えにより導入し、宿主アカマツとの共生にどのような影響を与えるかを検証することにした。腐生性担子菌であるヒラタケ由来のGH115(Glycoside Hydrolase 115)をコードする遺伝子をアグロバクテリウム用のプラスミドにクローニングし、コンピテントセルに導入した。現在、このアグロバクテリウムを利用して、ホンシメジの遺伝子組換えをすすめている。 また、今年度は菌根性子嚢菌類および腐生性(非菌根性)子嚢菌の全ゲノム比較試験もおこなった。子嚢菌にはトリュフなどの産業的に重要な菌根菌やセノコッカム(Cenococcum geophillum)のような森林生態系で最も繁栄している菌根菌が含まれている。全ゲノム比較試験の結果、菌根菌の多くは保有するが腐生菌の多くは欠損している遺伝子群として、機能未知の3回膜貫通型タンパク質や、LRRドメインを含む遺伝子、Zn2Cys6型転写因子など担子菌で同定されたものとは異なる遺伝子群を同定した。これらの遺伝子群の重要性を実証するため、新たに菌根性子嚢菌であるセノコッカムの遺伝子組換え系の構築に着手した。子嚢菌で一般的に利用されている方法でアグロバクテリウム法を試みたが、ハイグロマイシン耐性の遺伝子組換え株は得られなかった。そこで現在プロトプラストPEG法を検討している。現在までに、セノコッカムのプロトプラスト作成には成功しており、プロトプラストが安定して再生する条件を調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インシリコ解析を用いた全ゲノム比較については、菌根性担子菌についても菌根性子嚢菌についても事前の予想を上回る新規性の高い結果を得ており、非常に順調である。本研究の主題である菌根性担子菌であるホンシメジに加え、新たに菌根性子嚢菌であるセノコッカムの遺伝子組換えにも着手し、すでにプロトプラストの作成に成功しており、本研究期間内にセノコッカムの遺伝子破壊などを達成できる可能性も十分考えられる状況である。新型コロナウイルス感染症の影響でやや遅れていた生物実験についても徐々に遅れを取り戻しつつあり、全体としてはおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
菌根性担子菌であるホンシメジについてはこれまで作出済みの遺伝子破壊株および現在作出中のSTE12破壊株、GH115導入株などについてアカマツとの共生試験を順次すすめていく予定である。菌根性子嚢菌であるセノコッカムについては本研究期間中の遺伝子組換え手法および遺伝子破壊手法の確立を目指す。可能であればインシリコ解析から見出した遺伝子について破壊株を作出し、クロマツとの共生試験をおこなう予定である。また、ホンシメジ、セノコッカムのRNA-seq解析についても引き続きすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で実験計画に少し変更が生じているため
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