2022 Fiscal Year Annual Research Report
広葉樹導入の足がかりとなる外生菌根菌リソースの探索
Project/Area Number |
20K06150
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
田中 恵 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (40401301)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 広葉樹二次林 / 外生菌根菌 / 菌類リソース / 境界域 / 子実体 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の人工林の大部分を占めるスギやヒノキはアーバスキュラー菌根性樹種であるため、これらの樹種が長期間生育している林地に広葉樹を導入して樹木の種多様性を高めたい場合、感染可能な外生菌根菌リソースが存在しているか否かが導入広葉樹の生残を決定する重要な要因になると考えられる。しかし、単一の大面積針葉樹人工林内においては、限られた境界域を除いては侵入広葉樹の菌根共生は難しい。そこで、針葉樹人工林と広葉樹二次林が小面積でモザイク状に存在し、感染可能域の比較的大きい林地に着目し、新たに侵入する広葉樹実生に感染可能な菌根菌種を特定することにした。 まず、広葉樹二次林3サイトにおいて、外生菌根性4樹種の成木および実生から根系を採取し、ITS領域の塩基配列に基づく種推定を行った。採取した子実体も同様の種推定を行った。その結果、主な外生菌根菌はイボタケ科、ベニタケ科、テングタケ科、イッポンシメジ科等に属していた。また、遷移初期種とされるアセタケ科、ヒドナンギウム科も検出されたが、これらは定期的な林床管理を行っているプロットで頻出したことから、管理による林床の攪乱が菌根菌の種組成を変化させる一因となる可能性が伺えた。次に、3サイトの内の1サイトにおいて、集中的に子実体の探索を行ったところ、子実体466個から14科28属177種が検出され、出現種の傾向は地形的特徴や林冠構成樹種などにより変化することが示唆された。 さらに、異なる菌根タイプの樹種が隣接する林分と、混交する林分の土壌サンプルから得られた菌根菌の群集組成を比較したところ、隣接林分では混交林分とは異なり、境界からの距離に応じて種組成が変化し、特に境界付近では遷移系列の異なる多様な菌種が確認された。これらのことから小面積の広葉樹二次林においても地上部の林内環境の違いと外生菌根菌群集の変化には一定程度の傾向が見られることがわかった。
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