2020 Fiscal Year Research-status Report
大規模木造接合部のせん断メカニズムと振動特性の解明
Project/Area Number |
20K06157
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
澤田 圭 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10433145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨高 亮介 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林産試験場, 研究職員 (40782545)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドリフトピン接合 / 降伏耐力 / 吸収エネルギー / 柱脚接合部 / 鋼板配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
木造建築物が大規模化されると部材断面が大型化してくる。断面の大きさを有効に活かした接合法があれば、建築物に対する木材の活用にもつながる。そこで本研究では、鋼板の配置と枚数を変化させた鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部に静加力および周期的外力を与え、接合部のせん断挙動および振動特性を解明し、接合性能が最大となる接合寸法を示すことを目的とした。令和2年度は単位ドリフトピン接合部および柱脚接合部の静加力試験を行った。 単位ドリフトピン接合部は、E105-F300カラマツ集成材に9mm厚鋼板を挿入して、直径12mmのドリフトピン1本で接合した。材厚は150mmと210mmの2種類とした。試験は鋼板を1枚挿入と2枚挿入の接合部に対して行い、鋼板間隔は材厚150mmの場合で3種類、材厚210mmの場合で4種類とした。柱脚接合部の材料および接合寸法は、ドリフトピン本数以外は材厚150mmの単位ドリフトピン接合部と同じとした。集成材と鋼板は8本のドリフトピンで接合した。ドリフトピンは円形配置とし、回転中心からドリフトピンまでの距離は112mmとした。 単位ドリフトピン接合部試験の結果より、鋼板枚数が増えると接合性能は向上することが分かった。降伏耐力は、材厚150mm試験体では鋼板間隔80mmのとき、材厚210mm試験体では鋼板間隔120mmのときに最も大きな値を示した。吸収エネルギーは、材厚150mmおよび210mm試験体とも、鋼板が材縁近くに配置したときが最も大きな値を示した。柱脚接合部試験の結果より、降伏耐力は鋼板間隔80mmのときに最も大きな値を示した。以上の結果より、部材断面が大きい場合は鋼板を複数枚用いた方が接合性能を向上させることができ、鋼板間隔によって強度型の接合部か、靭性型の接合部を選択できることを示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、大規模木造建築物の接合法として期待される、鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部の静加力および振動加力時のせん断性能を評価することを目的としている。この評価を行うため、鋼板の配置と枚数を変化させた鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部に対して、静的加力試験および仮動的試験を行い、接合部のせん断性能および振動特性を調べる。これにより、せん断性能が最大化となる接合寸法を提示することが出来ると考える。 令和2年度は、単位鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部の静的加力試験を実施した。鋼板枚数は1枚と2枚の2種類、主材厚は150mmと210mmの2種類、鋼板間隔3~4種類と接合因子を設定した。鋼板の配置によって初期剛性、降伏せん断耐力、終局せん断耐力、終局変位、破壊までの吸収エネルギーがどのように変化するか調べ、せん断耐力が最大となる鋼板の配置や、破壊までの吸収エネルギーが最大となる鋼板の配置が明らかとなった。この実験は令和2年度内の実施を計画しており、当初の計画通りに達成することができた。 更にドリフトピンを使った木造建築物を想定して、柱脚接合部を製作した。ドリフトピンを8本用いて木材と鋼板を接合したもので、モーメント抵抗型の接合部とした。鋼板の配置は単位鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部の試験結果を参考に設定した。鋼板の配置と回転剛性、降伏モーメント、終局モーメント、終局変形角、破壊までの吸収エネルギーの関係を調べた。鋼板の配置が単位鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部と柱脚接合部のせん断挙動に及ぼす類似性や差異を明らかにすることができた。柱脚接合部の試験は令和2年度から3年度に掛けて実施を計画しており、当初の計画通りに達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究から鋼板の配置が単位鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部の荷重-変位挙動に及ぼす影響と、柱脚接合部のモーメント-変形角挙動に及ぼす影響を明らかにすることができた。また、最大荷重に達した後の荷重-変位挙動は単位鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部と柱脚接合部間で異なることも分かった。令和2年度は鋼板挿入接合部が柱側にのみある柱脚接合部について実験を行ったが、令和3年度は鋼板挿入接合部が柱側と梁側にある柱-梁接合部に対して静加力試験を行う。鋼板配置は柱脚接合部の場合と同様とする。これにより、鋼板の配置が柱-梁接合部のモーメント-変形角挙動に及ぼす影響を調べ、その影響は柱-梁接合部と柱脚接合部間で異なるのかどうか検討する。また木材の面圧試験から得られた支圧強度と、ドリフトピンの曲げ試験から得られた降伏曲げモーメントから、柱脚接合部と柱-梁接合部の降伏モーメントを推定できるか検証する。 さらに令和3年度は柱脚接合部と柱-梁接合部を対象に仮動的試験を行う。仮動的試験に用いる試験体の鋼板配置は、静加力試験体と同様とする。仮動的試験を実施する加力プログラムは既に構築済みである。静加力試験より柱脚接合部および柱-梁接合部の最大荷重は判明する。仮動的試験では、最大荷重よりも小さい荷重を周期的に与えたときの、各接合部の周波数依存性を調べる。これにより、柱脚接合部および柱-梁接合部の振動特性が分かり、これら接合部を使った建築物の地震時応答の予測に役立つことになる。
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