2021 Fiscal Year Research-status Report
モノリグノールの脱水素重合とリグニンの化学構造に及ぼす疎水環境の影響
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20K06169
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
岸本 崇生 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モノリグノール / 脱水素重合 / シナピルアルコール / コニフェリルアルコール / ペルオキシダーゼ / ラッカーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木の細胞壁のリグニンは、主要構造であるβ-O-4構造が50-60%を占めている。しかし、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)や市販のカワラタケ由来のラッカーゼなどを用いたモノリグノールの重合では、脱水素重合物(人工リグニン:DHP)のβ-O-4構造量は0-35%程度であり、樹木の細胞壁中のリグニンと比べて著しく少ない。その原因として、重合中のリグニン自身のベンゼン環による疎水領域や、セルロースやヘミセルロースなどの多糖を構成する単糖中のCH結合による疎水領域のため、実際の細胞壁中でのリグニンの生合成環境は従来考えられている以上に疎水的であり、その疎水環境がリグニンの化学構造を規定する重要な因子であると考えた。本研究では、モノリグノールの脱水素重合に及ぼす要因として、疎水環境の影響を中心に検討を続けている。今年度はモノリグノールとしてシナピルアルコールを用い、まずシナピルアルコールの基本的な反応について検討した。フローマイクロリアクタ―を用いて数秒以内のごく短時間で反応を止め、反応のごく初期段階の解明を試みた。その結果、反応初期には、シリンガレジノール(β-β型2量体)のみが生成した。次いで、より高い重合度のオリゴリグノールを得るため、滴下法を用いて反応させた。得られた反応生成物の単離と構造解析を行ったところ、様々なオリゴリグノールを単離することができた。それぞれの構造をHSQC NMRスペクトルなどを用いて同定し、それらの結果を元にシナピルアルコールの初期段階の反応を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シナピルアルコールの脱水素重合物の解析では、α‐カルボニルタイプのβ‐β構造を単離し、その構造が広葉樹リグニン中に存在することを確認することができた。またオリゴリグノール類に関しても構造解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コニフェリルアルコールやシナピルアルコールの脱水素重合に及ぼすセルロースやヘミセルロースなどの多糖類の影響について検討する。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた海外学会参加用の旅費の分を引き続き持ち越した。海外出張が困難な場合は、物品費として使う予定である。
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