2023 Fiscal Year Research-status Report
モノリグノールの脱水素重合とリグニンの化学構造に及ぼす疎水環境の影響
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20K06169
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
岸本 崇生 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | モノリグノール / ペルオキシダーゼ / ラッカーゼ / コニフェリルアルコール / シナピルアルコール / アシル化リグニン |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞壁のリグニンは、主要構造であるβ-O-4構造が50-60%を占めている。しかし、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)や市販のカワラタケ由来のラッカーゼなどを用いたモノリグノールの重合では、脱水素重合物(人工リグニン:DHP)中のβ-O-4構造量は、細胞壁中のリグニンと比べて著しく少ない。その原因として、重合中のリグニン自身のベンゼン環などによる疎水領域や、セルロースやヘミセルロースなどの多糖を構成する単糖中のCH結合などによる疎水領域のため、実際の細胞壁中でのリグニンの生合成環境は従来考えられている以上に疎水的であり、その疎水環境がリグニンの化学構造を規定する重要な因子であると考えた。これまでにモノリグノールの脱水素重合に及ぼす要因として、疎水環境の影響についてエタノールなどの有機溶媒を用いた検討やアシル基の影響について検討を行ってきた。シリンギルリグニンの形成の初期段階の解明を行うため、フローマイクロリアクターなどを用いてシナピルアルコールの反応についても検討してきた。また、ケナフなどに存在する、アセチル基などでアシル化されたリグニンの形成に及ぼすアシル基の影響を解明するため、HRP/過酸化水素を用いてシナピルγ-アセテートの反応生成物の解析を行い、テトラリンタイプのβ-β型2量体が生成することを確認した。これらの構造が実際にリグニン中に存在するか検討するため、栽培したケナフからリグニンを単離し、解析を行った結果、ケナフリグニン中にテトラリンタイプの構造は存在しないことが分かった。アセチル基の影響に加え、p-クマロイル基の影響や、トウモロコシリグニンの分析についても検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シナピルアセテートの脱水素重合物に加え、コニフェリルアセテートを用いて酵素脱水素重合を行った。コニフェリルアセテートの酵素脱水素重合はこれまでに報告がなかったが、複数のジリグノール類の生成を確認し、その構造解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コニフェリルアルコールやシナピルアルコール、シナピルγーアセテート、シナピルP-クマレート等の脱水素重合の際の初期反応生成物について検討する。また、トウモロコシリグニンの化学構造解析についても進め、アセチル基やp-クマロイル基の影響やその疎水環境の影響についても検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた学会大会に参加しなかったため、旅費を持ち越した。次年度旅費あるいは物品費として使用する予定である。
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