2020 Fiscal Year Research-status Report
Recycle of rubber by wood rotting fungus, Piptoporus soloniensis
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20K06170
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
佐藤 伸 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (60467438)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 加硫ゴム / 微生物分解 / キノコ / 脱硫 / 炭酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、加硫ゴム分解菌シロカイメンタケが加硫ゴム中の硫黄の架橋結合を切断していることを明らかにし、充填剤として添加されている炭酸カルシウムのゴム表面結晶化の原因についても明らかにすることを目的としている。 まず、研究代表者がゴム分解菌として自然界から分離したシロカイメンタケと思われていた菌のITS領域の遺伝子解析を行ったところ、遺伝子的に98%以上の相同性で別種のハカワラタケ(学名:Trichaptum biforme)であることが明らかとなった。ハカワラタケはこれまでに加硫ゴムの分解が報告されていない菌であり、初めての知見である。学外の研究機関から取り寄せたハカワラタケ2菌株について加硫ゴムの分解を試みたところ、研究室所有の分離株よりもゴム分解能は低いものの、2株ともに3ヶ月間で3%程度の重量減少が認められた。このことから、ハカワラタケによる加硫ゴムの分解は種に保存された機能であることが確認された。 ハカワラタケで処理した加硫ゴム中の硫黄結合の分析をX線吸収微細構造法で分析したところ、C-Sの結合の減少と、S-O結合の生成と増加が認められたことから、酸化的に加硫ゴム中の硫黄結合を切断していることが示された。また本菌で加硫ゴムを処理すると、充填剤の炭酸カルシウムが大きく減少する原因について、培地中のpHを確認したところ、pHが2付近にまで低下していたことから、本菌の分泌する有機酸がカルシウムを可溶化させたと推察した。木材腐朽菌が分泌する典型的な有機酸であるシュウ酸の生産量を分析したが、ゴム分解中の培地には目立ったシュウ酸量が見られなかった。このことから、シュウ酸以外の酸性物質が炭酸カルシウムの溶解に関与していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はシロカイメンタケと考えられていたゴム分解菌が遺伝子からの種の同定によってハカワラタケ(Trichaptum biforme)であることが判明したことは予想外の結果であったが、同じハカワラタケの別株でも加硫ゴムの分解性が認められたことで、種に保存された機能であることが確かめられた点はプラスの成果である。また、加硫ゴム分解菌ハカワラタケの作用が、ゴム内部の硫黄結合を酸化的に切断することをX線吸収微細構造法で検証できた点と、加硫ゴム中の炭酸カルシウムの減少には培地中のpHを2程度にまで下げる酸性物質の関与が示唆された点から、研究の次の段階がおおむねイメージできている。これらのことから、研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1年目に明らかとなったゴム分解菌ハカワタケの特徴をもとに、加硫ゴムの脱硫と炭酸カルシウムの溶解を引き起こすファクターを探し出していきたい。具体的には、菌の分泌する代謝物の中から加硫ゴム中の硫黄結合の修飾に関わるファクターをLC-MS等で探索する。また炭酸カルシウムの溶解に関与するファクターについても探索を行い、分離精製したものを用いて実際にin vitro系で炭酸カルシウムの溶解を確認したい。加硫ゴム中の炭酸カルシウムの脱離が培養とともにゴム表面からゴム内部へと進み、ゴム内部が空洞化されていく様子がX線観察から明らかになってきている。このことから、培養開始からどのタイミングでゴム中の炭酸カルシウムが除去されていくのか、少し細かく解析を進めていくことも考えている。
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