2022 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞中の構造を維持した未変性ペクチンの抽出と構造に基づく機能の解明
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20K06175
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
熊谷 明夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (30747837)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペクチン / 柑橘 / 植物細胞壁 / セルロースナノファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、植物組織内におけるペクチンが本質的に示す構造的特徴と物性、その相関から植物組織内におけるペクチンの機能を解明することである。この目的を達成するため、申請者らが開発した技術で製造した未変性のペクチンが特異な分子間互作用で結合した柑橘由来のセルロースナノファイバー(CNF)から、未変性のペクチンを分離・単離することで、植物組織内におけるペクチン本来の機能を明らかにすることを目指してきた。 今年度は、本課題の方法で調製したペクチンと、従来法で抽出したペクチンの違いについて、これまでに解析してきた分子量や構成糖の比率、エステル化度の情報に加え、核磁気共鳴や質量分析などを用いた分析を行うことで、化学的な構造をより詳細に調べることを試みた。しかしながら、分析に適したサンプルを調製するための前処理において適当な条件を見出すことができず、構造の解明に繋がる結果を得ることができなかった。一方、水晶振動子マイクロバランス法を用いた物質間相互作用の解析により、従来法で抽出したペクチンと、本課題の方法で調製したペクチンとの間で、セルロースに対する吸着特性が異なることが示され、ペクチンが植物細胞間の接着に関与していることを間接的に示す結果が得られた。 次年度は、本年度成功に至らなかった核磁気共鳴、質量分析を用いた構造解析を実現するため、これらの分析に適した前処理方法の検討を引き続き行い、本課題の方法で調製した未変性のペクチンの構造解析を目指すと共に、得られた構造の情報と、これまで解析した物性や接着特性との相関から、植物組織内におけるペクチンの機能の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は3年目である最終年度とし、柑橘由来のCNFから調製した変性が抑えられたペクチンの構造的特徴の解析として、核磁気共鳴や質量分析などを用いた精密解析により、従来の抽出方法で得られるペクチンとの違いを明らかにすることを目標としていたが、適当な前処理方法が見出せず、構造解析に足る解析結果を得ることができなかった。一方で、3年目の課題としていた機能解析のひとつである吸着特性については、本課題の方法で調製したペクチンと従来法で抽出したペクチンとの違いを見出すことができた。しかしながら、本課題の要となる未変性ペクチンの構造に基づく機能の解明に至らなかったことから、進捗状況は「やや遅れている」とし、本課題の主目的を達成するため研究期間を1年間延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目に達成予定であった核磁気共鳴、質量分析を用いた構造解析を実現するため、これらの分析に適した前処理方法の検討を引き続き行う。従来の抽出方法で得られるペクチンとの違いから、変性が抑えられたペクチン特有の構造を明らかにすることで、植物組織内におけるペクチンが本質的に示す構造的特徴を見出す。構造解析の結果と、これまでに解析した物性や、ペクチンの機能と考えられる接着特性との相関関係を明らかにする。また、これらの研究結果に基づき、学会、論文での発表を行う。
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Causes of Carryover |
研究期間を1年間延長させることを受け、次年度も本課題に対して予算を使用可能にしたため。また、論文の校正・投稿費を想定していたものの、論文執筆に至る成果が得られなかったため。 次年度使用額については、延長期間中に実験を実施する上で必要となる消耗品を購入する他、論文の校正・投稿費として使用する。
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