2021 Fiscal Year Research-status Report
絶滅危惧貝類ドロアワモチの生息環境・生態および分類に関する研究
Project/Area Number |
20K06184
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高木 基裕 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (70335892)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドロアワモチ / 絶滅危惧貝類 / 保全 / 生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹足綱収眼目アワモチ科貝類のドロアワモチは内湾の干潟の一部に生息し、干潮時には干 潟を匍匐、表面のデトリタス等を摂食し、満潮時には砂泥中に潜り込むとされる。本種は環 境省または各自治体のレッドデータブック等に絶滅危惧種として記載されている。絶滅危惧種の保全において、保全対象種についての基礎的情報となる生息環境および生態の把握が重要であるが、ドロアワモチについては生息適地の環境や生態に関する研究は行われていない。また、愛媛県ではドロアワモチと同所的に生息するジャコテンアワモチが識別され、九州北部には大型のヤベガワモチの生息も知られているが、申請者らによる遺伝的解析により、これらドロアワモチ属3種が同種である可能性が示唆されている(高木ら 2019)。本研究では、ドロアワモチ生息地における環境調査、生態・飼育観察および形態学的・遺伝学的解析を行い、ドロアワモチの生態および生息適地の環境条件について明らかにするとともに種の確定にむけた作業を行うが、本年度はドロアワモチとジャコテンアワモチの内部形態を精査し、御荘湾のドロアワモチの保全対象を明らかにすることを目的とした。 ドロアワモチの腸管の巻き方はアワモチ科貝類の腸管形状タイプⅡであったが、ジャコテンアワモチにおいても腸管の形状はタイプⅡであった。また、雄性生殖器、歯舌ともに2種間に差異はみられなかった。以上のことから遺伝解析とも合わせドロアワモチとジャコテンアワモチが同種である可能性が高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドロアワモチの腸管の形状は、後方右側から頭部に向け2本の腸管が大きくCの字に曲がり前方中央で逆Sの字に湾曲しており、アワモチ科貝類の分類形質である、タイプⅡに類似していた。また、ジャコテンアワモチの腸管の形状もタイプⅡと類似していた。頭部口吻付近右側に収納されている雄性生殖器官の生殖腔、副腺鞭状器、陰茎鞘、陰茎牽引筋、排出管の構造においてドロアワモチ及びジャコテンアワモチ間に差異はみられなかった。また、電子顕微鏡により歯舌の形状を比較したところ、ドロアワモチ及びジャコテンアワモチの側歯および中央歯の三尖頭の形状においても差異はみられなかった。 本年度の解析によりドロアワモチ保全対象種が明らかとなり、本研究課題の現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
御荘湾に生息するドロアワモチ類について生態観察や飼育観察を行い、干潮時の摂餌場への出現の仕方、繁殖行動および他の生物種との関係等についても明らかにする。 ドロアワモチ類は匍匐速度が1m/時程度と小さく、行動観察が容易であるため、帰巣や繁殖行動について解析を行う。飼育については、ドロアワモチの満潮時や冬眠時の行動など野外観察では難しい行動を補完して観察する。また、人工繁殖に向けた飼育法の確立も行う。
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Causes of Carryover |
次年度当初に必要となる消耗品が生じるため
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