2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K06187
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
遠藤 光 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (00523630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 裕 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(塩釜), 主任研究員 (80371805)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海藻 / 温暖化 / 光阻害 / 熱放散 / 抗酸化物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成生物では、高温や低温などの環境ストレス下で過剰な光エネルギーに曝されると葉緑体内で活性酸素種が増加して光阻害(光合成活性の低下)が発生することが知られている。また、光合成生物は、光阻害を防ぐ光防御機構として、過剰なエネルギーを熱として放散したり、抗酸化物質を生産したりすることが知られている。しかし、光防御機構が発現する環境条件に関する知見はまだ少ない。また、褐藻における知見も少ない。 本研究では、褐藻ヤツマタモクの主枝を対象として、光阻害の指標Fv/Fm、熱放散の指標NPQ、熱放散を担うキサントフィルサイクル色素VAZとクロロフィルa(Chl a)の比、抗酸化物質フコキサンチンFucoとChlaの比に対する水温(適温20℃と低温8℃)と光量(弱光と強光)の複合作用を調べた。その結果、適温・弱光区に比べて、低温・強光区ではFv/Fmが低下し、NPQ、VAZ/Chl a、Fuco/Chl aが上昇した。以上の結果から、低温と強光が重なると光阻害が発生する一方で、キサントフィルサイクル色素が増加して熱放散能力が向上し、抗酸化物質の生産も増加することが明らかになった。 また、褐藻ヒジキの主枝の相対成長率RGR、補助色素クロロフィルc(Chl c)とChl aの比、VAZ/Chl aに対する水温(適温23℃と高温26℃)と光量(弱光と強光)の複合作用を調べた。その結果、RGRは適温では光量上昇によって上昇したのに対して、高温では上昇しなかった。Chl c/Chl aは適温では光量の影響を受けなかったのに対して、高温では光量上昇により低下した。VAZ/Chl aは水温に関わらず光量上昇によって上昇した。以上の結果から、高温と強光が重なると褐藻の成長が停滞し、補助色素の合成が抑制されることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から計画していたヤツマタモクとヒジキの実験を行うことができ、おおむねは仮説通りの結果が得られたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象である大型褐藻にはコンブ目とヒバマタ目が含まれる。これまでに得られた結果はヒバマタ目(ヤツマタモクとヒジキ)に関するものであるため、コンブ目褐藻のワカメ等でも同様の実験を行い、分類群間の共通点と相違点を明らかにする。また、抗酸化物質の含有量だけでなく、抗酸化作用の測定も行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型肺炎の感染拡大によって学会や研究打ち合わせにかかる旅費の支出がなくなり、かつ、光合成色素の分析にかかる消耗品の補充の必要性もなかったため。今年度は消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)