2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K06187
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
遠藤 光 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (00523630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 裕 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(塩釜), 主任研究員 (80371805)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海藻 / 熱放散 / キサントフィルサイクル / 温暖化 / 光順化 / 栄養塩濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年には宮城県産ヒバマタ目褐藻ヒジキを対象として実験を行ったが、海藻の高水温耐性は一般的に採集海域(緯度)によって異なることが知られているため、2021年には鹿児島県産ヒジキの主枝の成長率および光合成パラメーターに対する水温(適温20℃、高温30℃)、光量(弱光と強光)、栄養塩濃度(富栄養と貧栄養)の複合作用を調べた。その結果、成長率は水温上昇、光量低下、栄養塩濃度低下に伴って低下したが、宮城県産ヒジキとは異なって成長率に対する水温上昇と光量上昇の相乗作用は認められなかった。また、補助色素クロロフィル(Chl) c / Chl a比に対する水温上昇と光量上昇の影響も認められなかった。このような採集海域による結果の相違は、鹿児島県産の高水温耐性が高いことに起因すると推察された。加えて、熱放散の指標NPQおよび熱放散を駆動するキサントフィルサイクル色素は、水温の影響をあまり受けず、貧栄養と強光が重なると増加するが、富栄養条件では強光でも増加しないこと、すなわち熱放散に対する強光順化の影響は栄養塩濃度に依存することが分かった。 さらに、ヒジキと系統的に異なるコンブ目褐藻ワカメを対象として、成長率および光合成パラメーターに対する水温(20、23、26℃)と光量(弱光と強光)の複合作用を調べた。その結果、水温上昇に伴って成長率が低下し、複数の色素が減少すること、熱放散を駆動するキサントフィルサイクル色素は高温・強光ほど増加するのに対して、それと正の相関を持つと考えられてきた熱放散の指標NPQは高温ほど低下することが明らかになった。このように、熱放散に対する水温上昇の影響は、ヒバマタ目のヒジキとコンブ目のワカメでは異なることが分かってきた。 本研究成果の一部は国際誌に公表した(Endo et al. 2021、Charan et al. 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りにヒジキとワカメの実験を行うことができ、一定の成果が得られ、かつ、本研究成果の一部を論文として公表できたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
海藻の抗酸化作用に対する光・温度順化の複合作用も評価し、抗酸化作用と抗酸化物質含有量の関係も検討する。また、得られた研究成果を論文として公表する。
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Causes of Carryover |
昨年度の予算の大部分は論文掲載料として使用する予定であったが、投稿した論文が昨年度末まで受理されなかったため残額が生じた。なお、この論文(Charan et al. 2022)は昨年度末に受理されたため、その掲載料を今年度支払う予定である。
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Research Products
(2 results)