2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on the mechanism of recruitment fluctuation of the Japanese surf clam Pseudocardium sachalinense
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20K06190
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
櫻井 泉 東海大学, 生物学部, 教授 (30505061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウバガイ / 加入量変動 / 水温 / 産卵期 / 浮遊幼生 / 水塊構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウバガイの加入量変動機構解明の一環として、北海道苫小牧沿岸において成熟状況と産卵期を生殖巣指数により推定し、その年変化と稚貝発生量および水温の関係を調べた。また、ウバガイ浮遊幼生の分布と水塊構造の関係を解析した。その結果、産卵期は、2014年と2018年は2か月に及んだのに対して、2015-2017年と2019-2020年は1か月程度であった。そこで、指数のピーク値を配偶子形成量とみなし、稚貝発生量との関係を解析した結果、両者の間に相関はなく、稚貝発生量は配偶子形成量の多寡とは無関係であることが示唆された。また、6月および7月の指数減少率と稚貝発生密度の関係を解析した結果、7月の指数減少率が高い年ほど稚貝発生密度は高くなる傾向がみられ、稚貝発生量は産卵期が長期化するほど多くなることが示された。さらに、生殖巣が発達する10-4月と産卵期を迎える5-7月の積算水温について指数のピーク値と産卵期の長さとの関係を解析したところ、配偶子形成量は10-4月の積算水温が低い年ほど多くなるが、稚貝発生量の多寡には関与せず、5-7月の積算水温が低い年ほど産卵期が長期化することにより稚貝発生量が多くなる可能性が示唆された。一方、殻長0.24mm以下の浮遊幼生は6-7月には検出されたが、8月には殆ど出現しなかった。また、殻長0.24mm以上の成熟幼生は、6月に距岸1600-2000mの深度20-25m層に分布した以外は検出されず、8月には全くみられなかった。さらに、2020年は本種稚貝の発生は検出されなかった。そこで、水塊構造との関係をみると、本種の成熟幼生の出現に関係する1025.5kg/m3以上の水塊は、成熟幼生が出現した時期と場所に限られていた。これより、2020年に稚貝発生がみられなかったのは、短い産卵期の影響に加えて浮遊幼生が存在しにくい水塊構造であったことが関与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に掲げた3つの課題、①水温・餌料条件が母貝の成熟状態と産卵期間の長さに及ぼす影響の評価、②水温・塩分・餌料・流動条件が浮遊幼生の分散や生残に及ぼす影響の評価、③成熟・産卵期と浮遊幼生期の環境条件が加入量の年変動に及ぼす影響の評価について、すべての項目について実施し、当初の計画どおりデータが得られている。また、①に掲げた飼育実験に関しても現在実施中であり、次年度の報告には結果の概要を報告できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はウバガイの成熟・産卵状況、浮遊幼生の動態および稚貝の発生状況を5年間調査し、これらを環境要因との関係で解析することにより本種の加入量変動機構の一端を解明しようとするものである。このため、次年度以降も引き続き本年度と同様の調査、解析および飼育試験を実施する予定であり、単年度ごとに得られた成果を学会発表するとともに、3年後を目処に飼育実験の結果、最終年度を目処に総括的な結果を論文発表する計画である。
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Causes of Carryover |
本研究を5年間で遂行するためには、初年度に電磁流向流速計とワイパー式クロロフィル濁度計を同時購入する必要がありましたが、初年度当初に配当いただいた直接経費ではこれら2機種の購入費用を賄うことができないため、2021および2022年度の直接経費の一部を前倒し支払い請求いたしました。その請求額が10万円単位であったため、余剰金が発生し、次年度使用額が生じました。
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