2021 Fiscal Year Research-status Report
呼吸波の信号成分分析による魚類のストレス度推定法に関する研究
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20K06195
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
平野 旭 呉工業高等専門学校, 電気情報工学分野, 准教授 (60594778)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 呼吸信号 / ストレス度推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
心拍と呼吸は相互作用をしており,脊椎動物以上で共通した自律神経のメカニズムをもつといわれている.心拍のピーク間隔は安静時にばらつき,ストレスなどを感じている心身異常時にはピーク間隔が一定になることが医学・生物学分野の従来研究において明らかにされている.以上の知見より,魚類においても,呼吸波のピーク間隔を利用することで,ストレス度の分析が可能であると考えた. メダカおよび他の動物の呼吸信号は正弦波でなく,一周期の途中で小さな山(谷)を持つ形状をしている.これについて,周波数分析をして最もピークが現れる周波数(主成分:f1)については,呼吸の頻度を反映していることは,過去に明らかにしてきた.一方,この一周期の途中で確認される小さな変化については,主成分周波数の倍周期(倍周期成分:f2)の信号が,さまざまな位相差で加わっている可能性をシミュレーションで確認した. そこで本年度は,計測された呼吸信号から,主成分信号のみを抽出し,人間の心拍変動解析と同様に「変動係数」を用いて,主成分信号のピーク間隔のばらつきを計算し,ストレス指標とすることの有用性について確認を行った. 生化学的分析(コルチゾル分析)によるストレス度との比較・検証は行えていないが,従来研究でストレスを大きく与えるとする「別の水槽へ移送」したタイミングや,自然遊泳中に壁面の網に引っかかった時間帯ではピーク間隔のばらつきが小さくなることでストレス指標の値が小さくなり,水槽に慣れて通常遊泳する時間帯では,その逆の傾向あらわれることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メダカの解剖実験において,倫理面を考慮したスタンダードな麻酔薬の情報や,倫理面を考慮したコルチゾル実験の目途が立てられていない点や,呼吸波計測システムの問題点のリカバリーが生じているため.
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Strategy for Future Research Activity |
メダカの呼吸波を計測する水槽は,従来研究の「必要最低限の大きさ」を考慮したサイズとしている.水槽のどこを泳いでも呼吸信号をロストしないために,計測電極は4chほど配置している.昨年度のストレス指標の分析においては,特定のチャネルから計測された信号を用いて,その評価を行った.本年度は,水槽中の4chのうち,最も信号が大きく計測されているチャネルを自動選定し,そのチャネルの信号を用いてストレス指標を算出し,指標の有用性の確認と,刺激を与えたあとの時間的変化(アダプテーション)を確認する計画である. また,呼吸波計測システムを長期稼働させることで発生するノイズについて,電極部分の接着剤などが問題となっている点についても,改善に取り組む計画である.
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Causes of Carryover |
研究支援者より,コルチゾル実験の指導を頂ける研究者の紹介をしてもらうことはできたが,新型コロナウィルスの影響により,出向くことができない状況となったことなどが大きい.また,正確に呼吸信号を計測することを目的に,生体信号アンプの購入を計画していたが,世界的な物品不足の情勢を受け,研究費を適性かつ最大効率で利用する観点から物品購入を見送ったことが理由である.
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