2020 Fiscal Year Research-status Report
Can spiny lobsters be predators controlling the distribution of herbivorous fishes?
Project/Area Number |
20K06196
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
川俣 茂 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(神栖), 主幹研究員 (50372066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益田 玲爾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60324662)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保護区 / 栄養カスケード / 捕食者 / イセエビ / 植食魚 / 藻場 |
Outline of Annual Research Achievements |
高知県のイセエビ保護区となっている小湾とその周辺域で、9月10日と10月15日の2回、場所を変えて、絶滅している大型海藻カジメを撮影装置に取り付けて合計4地点に移植し、タイムラプス撮影を行った。各移植カジメ4本は移植後3~14日に出現した全長38~46 cmの大型ブダイ1尾に食害されたが、それ以外の植食魚は観察されなかった。保護区内2地点でカジメを摂食したブダイは同サイズ(全長46 cm)の大型個体であったことから1個体である可能性がある。これらの結果は、当初の予想「植食魚は夜間岩陰で眠るため、成魚期前では夜行性のイセエビに捕食される可能性が高い。このため、大型イセエビが多数生息する保護区では植食魚の小型個体は生残できず、生存しても他所から来遊した大型個体に限られる。」に合致した。植食魚の個体数が予想以上に少なかったことから、新たな展開として、それらの植食魚の除去により絶滅して久しいカジメ場を移植により回復できる可能性が考えられた。 イセエビによる植食魚の捕食を、大型(頭胸甲長95~106mm)エビ9個体とアイゴ(体長54~127 mm)33個体を用いた水槽実験により検討した。イセエビを収容した200L水槽(レンガの隠れ家を設置)内に、円柱形の囲い網(直径40cm)を設けてアイゴを収容し、約28h馴致後、網を引き上げ、自動調光と人工海藻のある/なし条件下で24hの実験を行ったところ、海藻ありとなしでそれぞれ25試行中6回と8試行中1回の被食がいずれも夜間に生じた。このことは、アイゴが夜間、海藻に寄り添って眠ったことによりイセエビに被食されやすくなった結果と解釈されるが、用いた水槽の大きさや馴致手法によりアイゴがイセエビを極度に警戒して眠れずに被食され難くなった可能性もある。実験方法を修正して再実験を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イセエビによる植食魚の捕食実験では、植食魚としてブダイを用いることを計画していたが、ブダイの入手先として期待していた水族館3施設がコロナ禍で採集に行けなかったことや、入手できても20 cm以下の小型魚が入手できない等の理由により、実験に適したサイズのブダイの入手ができなかった。このため、実験場所の周辺で入手可能な植食魚としてアイゴを用いた実験を行ったが、赤外線カメラによる夜間撮影の不調(赤外線の海水による吸収のため)により夜間の行動が分からなかったこと、(2)使用した水槽が小さく、アイゴがイセエビを警戒し、夜間眠らなかった可能性があること、などの問題により、適切な条件(アイゴが夜間寝所で眠った状態)における捕食・被食の体サイズ関係を明らかにできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
試験地のイセエビ保護区では、引き続き、イセエビと植食魚の体サイズを調べ、仮説の検証データを取得するとともに、昨年度の実験により示唆された新たな可能性「保護区内に生息する、カジメを食害する植食魚は非常に少なく、それらを除去できれば、移植によりカジメ群落を回復できる」を、実験により検証する。また、水槽実験では、水槽サイズの大型化、水槽側面からの暗視カメラによる撮影などの実験手法の改良により、夜間眠っている状態でのブダイとアイゴに対するイセエビの捕食可能な上限サイズを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画のとおり、移植海藻を食害する植食魚の体長計測のため、2台のタイムラプスカメラを用いた安価なタイムラプス・ステレオ撮影装置の開発を検討した。しかし、用いたタイムラプスカメラでは、内部時計の精度が所要の水準を満たさず、同時撮影ができないことが判明したため、開発を断念せざるを得なかった。その代替案として、1台のカメラで植食魚の体長を計測できよう、撮影装置に参照スケールを取り付ける方法を考え出し、移植海藻を食害する植食魚の体長計測に成功した。この計測方法の変更により、タイムラプスカメラは半分の台数で調査を計画どおり行うことができた。また、移植カジメは11月までにすべて食害されたため、追跡調査は予定より回数を減らして終了した。これらの計画変更に伴い生じた残額については、カジメの移植実験を4地点で同時に行うために必要となるタイムラプス撮影装置2台の増設経費と、新たに可能性が見出された、植食魚の駆除によるカジメ群落回復の検証実験経費に当てる。
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