2021 Fiscal Year Research-status Report
Can spiny lobsters be predators controlling the distribution of herbivorous fishes?
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20K06196
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
川俣 茂 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 研究員 (50372066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益田 玲爾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60324662) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保護区 / 栄養カスケード / 捕食者 / イセエビ / 植食魚 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査地のイセエビ保護区では、昨年度タイムラプス撮影装置を併設して実施した海藻移植実験により大型褐藻カジメを食害する動物は1ないし2尾の大型ブダイ(全長46cm)に限られている可能性が示唆された。今年度はその可能性を保護区内の4箇所同時実施のカジメ移植実験により確かめると共に、ブダイ除去によるカジメ場回復の可能性を検討した。ブダイ除去は捕獲器具の強度不足(釣糸の切断)によりできなかったが、移植実験により当保護区にはカジメの植食動物として大型(全長TL38~46cm)ブダイ3尾しか生息していないことが確認され、仮説「イセエビ保護区では植食魚はイセエビが捕食可能な小型個体は生息できず、生息しても他所から移動してきた大型個体に限られる」を支持する結果が得られた。 イセエビによる植食魚の捕食に関する水槽実験は、実験を予定していた京大舞鶴水産実験所で解決困難な問題が発生したため、急遽、場所を水産技術研究所神栖庁舎に変え、植食魚として入手できたアイゴを用いて実施した。イセエビ16尾(頭胸甲長CL61~108mm)を、同程度の大きさの個体2尾ずつ8組にわけて収容した8試験区の各々に、体長の異なるアイゴ幼魚(TL55~108mm)8尾ずつを隠れ場とともに入れて4週間、その生残を調べた。その結果、アイゴ11尾(17%)の減耗が確認され、夜行性のイセエビが夜間水底直上で眠るアイゴを捕食できることを明らかにした。しかし、アイゴの被食は1尾を除いてすべて最初の1週間に限られ、アイゴが学習によりイセエビによる攻撃を回避できるようになる可能性が示唆されるとともに、捕食尾数が想定よりも少なかったことや、明瞭な捕食者・被食者の体サイズ関係が見出せなかったことから、各試験区に設置したアイゴ用の隠れ家の形状やアイゴを群れで試験したことなどが捕食に影響した可能性も考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
水槽実験の実施を予定していた京大舞鶴水産実験所で、(1)今年度に入ってから通常はみられない原因不明で、解決の難しい問題(イセエビ同士の喧嘩)が発生したこと、(2)昨年度観察されたイセエビによる捕食が全く観察されなくなったこと、(3)実験施設の制約から水温制御下での適切な実験を実施できる時期が限られ、年度内の実験着手に見通しが立たなくなったことから、年度途中に実験場所を水産技術研究所神栖庁舎に変更した。また、水槽実験に用いる植食魚として、当初アイゴとともにブダイも検討していたが、ブダイ幼魚の入手を試みたものの、実験に必要なサイズや尾数を確保するのが極めて困難であることが判明し、アイゴに焦点を当てた実験に切り替えた。以上の変更に伴い、水槽実験を開始するのが予定より半年以上遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
野外実験については、調査場所のイセエビ保護区において、イセエビの主要な隠れ場となっている投石礁でイセエビの体サイズと生息密度を調査し、その捕食能力として重要な体サイズ組成を把握する。イセエビの体サイズ調査には、ステレオカメラを用い、岩の間に隠れているイセエビを撮影し、映像では直接みることのできない頭胸甲長をKawamata & Taino(2018)の方法により推定する。 水槽実験については、引き続き水産技術研究所神栖庁舎で実験を行う。植食魚としては、確実に入手できるアイゴを主に用いるが、ブダイについても入手可能な近縁種も含めて入手して実験を試みる。植食魚の夜間行動の把握については、当初利用を予定していた暗視カメラの利用に問題があることから、水中センサーに変えて実験を行う。また、イセエビによる捕食に及ぼす植食魚の隠れ場の形状や群れの影響についても調べ、研究のとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
水槽実験について、想定外の問題に直面し、年度途中で実験場所を京大舞鶴水産実験所から水産技術研究所神栖庁舎に変更した。この変更に当たり、次年度に繰り延べざるを得ない実験に備えて当科研費をできるだけ節約して次年度に繰り越せるよう、水産技術研究所運営交付金により実験器材の修繕を行ったことと、実験の遅れにより研究発表を見送ったことにより、残予算が生じた。繰り越し額については、計画を変更して実施する水槽実験で新たに生じる必要経費に当てる。具体的には実験動物畜養水槽の水温調節器の増設、植食魚の夜間行動を把握するための水中センサーの購入、実験動物の購入、実験器材の改良等に当てる。
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Research Products
(3 results)