2021 Fiscal Year Research-status Report
内湾域における底曳網漁業による水柱への栄養塩供給機能の定量評価
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20K06198
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
秋山 諭 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 主任研究員 (90711672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 祐介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20635164)
新井 励 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60508381)
木村 祐貴 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員 (90797169)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 底曳網漁業 / 海底耕耘 / 栄養塩供給 / 水産多面的機能 / 大阪湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、底曳網漁業による海底擾乱を新たな栄養塩供給ソースとして捉え直し、物質循環系の適切な評価・検証を進める。従来、内湾の栄養塩ソースとしては陸域からの流入、海底からの溶出、外海からの流入が検討されていた。しかし、底曳網を用いた恒常的な漁撈行為による海底からの人為的な供給は考慮されていないことから、海底からの栄養塩供給が過小評価されていると考えられる。本研究では、大阪湾の石桁網漁業を対象として、内湾における物質循環に人為的攪乱が果たす役割を解明するために、底曳網漁業による栄養塩供給機能を定量化し、湾全体の物質循環系に占める影響を評価することを目的とする。2021年度は以下の研究成果を得た。 (1) 底曳網漁業の実態解明:昨年度からの継続で、標本船にGPSロガーを搭載し、操業時のデータを周年にわたって収集した。位置・速度データから曳網時間・曳網距離・曳網速度を算出した。同船の日誌データから年間の操業日数・曳網回数を抽出し、総曳網面積を推定した。操業日誌を収集している他船の情報を取りまとめ、船ごとの操業海域をマッピングした。 (2) 底曳網による海底耕耘効果の検証:石桁網漁船を用船した実地試験により、漁船の通過前後にADCPによる濁度観測や採水を実施し、海底泥の巻き上がりや栄養塩類の分布を調査した。 (3) 海底泥の栄養塩供給ポテンシャルの解明:昨年度からの継続で、大阪湾全域を対象に調査定点を設け、コア採泥器による海底泥の採取を行った。採取した底泥から間隙水を抽出し、栄養塩類や溶存態有機物を測定し、物理・化学的環境との関係解析を行った。 (4) 物質循環系への寄与の推定:上記(1)~(3)の結果を踏まえ、数値シミュレーションにより、石桁網漁業による栄養塩供給量、生物生産への寄与を見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
底曳網漁業の実態把握に努めつつ、実地試験・調査により石桁網による海底泥巻き上げや間隙水中の栄養塩ストックについても知見を収集し、数値シミュレーションによる物質循環系への寄与推定も実施した。 標本船の航跡データから、漁獲対象の季節変化により操業海域や曳網方法も季節性があることが明らかとなった。また、操業日誌や聞き取り調査の結果を用いて、数値シミュレーション用の操業マップを作成した。また、大阪湾全域を対象とした底泥間隙水調査では、間隙水中の栄養塩濃度は季節よりも空間(海域)に依存しており、粒度との相関が高いことが明らかとなった。操業マップや間隙水栄養塩の空間分布データを用いて、石桁網漁業による栄養塩供給をモデル化し、栄養塩供給量を推定した。メッシュごとに見積もった栄養塩供給量から、3次元流動・水質モデルにより石桁網漁業による影響を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ADCPによる濁度観測が予定回数に満たないため、令和4年度も調査を継続し、石桁網による海底泥巻き上げのフラックスについて解析を進める。また、数値シミュレーションの結果について、数値の妥当性の検証を進める。 令和3年度までと令和4年度に得られた結果は、令和4年度内に論文や学会発表により公表を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大に伴い研究分担者の出張が制限され、観測回数が予定を下回り、物品費等が抑制された。また、学会や研究打合せが対面開催ではなくウェブ開催となったことで旅費が予算を下回ったことで、次年度使用額が発生した。 次年度使用額については令和4年度に請求した助成金と合わせて、主に調査・試験のための消耗品費、先送りとなった観測に使用することを計画している。
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Research Products
(3 results)