2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K06205
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木村 妙子 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (40346002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井田 俊 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60743581)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 塩性湿地 / 腹足類 / 分布 / 成長 / 浄化能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
耐塩性植物が生息する塩性湿地には多くの絶滅危惧種を含む底生無脊椎動物(以下,ベントス)が生息し,水質浄化作用などの様々な生態系機能を有する重要な場所のひとつであると言われている。しかし,塩性湿地における生物活動が実際に水質浄化にどの程度貢献しているのかを定量的に検証した例はまったくないのが現状である。 今年度は,伊勢湾西岸において特に保存状態が良く,生物相が詳しく調査されている三重県田中川干潟の塩性湿地において,2021年6月に田中川干潟の5地点でコドラート調査を行い,ウミニナ類およびキバウミニナ類5種の分布と殻長・殻幅を測定した。 また,野外飼育実験として各種の分布域において砂と温度ロガーを入れたケージを各種3個ずつ設置した。貝は全て個体識別と計測をし,大中小の3つのサイズ区分に分け,1個のケージにサイズ毎に5から10個体ずつ入れ,2021年5月から毎月1回成長推定のためのデータを収集している。また,底質や海水中の有機物やクロロフィル量のサンプルを収集している。野外飼育実験の2021年5月から12月までの結果から,干潟に生息するウミニナとホソウミニナでは,大型個体の成長はほとんど見られず,中型は9月,小型は10月まで成長が見られた。澪筋周辺に生息するヘナタリとカワアイにおいても,調査期間中に大型の成長はほとんど見られなかったが,ヘナタリの小型と中型は10月まで成長し,12月には平均殻長30mm前後に達した。一方,カワアイでは中型は9月まで緩やかに成長したが,小型は中型よりも成長が速く,8月には中型よりも平均殻長が大きくなり,10月には平均殻長35mmまで成長した.ヨシ原に生息するフトヘナタリでは,小型と中型は9月まで成長が見られたが,大型個体は殻の摩耗による殻長減少が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は5月以降予定されていたケージによる野外飼育実験を開始し,現在も順調に実験を継続している。また,昨年度新型コロナウイルスの拡大のため行うことができなかった貝類各種の消化酵素活性分析や炭素・窒素安定同位体比分析を,東京大学大気海洋研究所と島根大学で行った。2020年度,2021年度は新型コロナウイルスの拡大のため,調査の最適期である春季に野外調査を行うことが困難だったため,塩性湿地全体の貝類相の調査などは行われておらず,全体的に予定していた進捗より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,塩性湿地貝類の個体数推定のために,伊勢湾西岸において特に保存状態が良く,生物相が詳しく調査されている三重県田中川干潟の塩性湿地の全域に10本のライントランゼクトを設置し,各ラインで10カ所(計100カ所)においてコドラート法を用いて,巻貝類を定量採集する。種別のサイズ分布や個体数密度を精査することで,塩性湿地全体における各種の個体数や個体群構造を推定する。調査は貝類の活動が活発な5月から7月に行う。現在行なっているウミニナ類およびキバウミニナ類5種の野外のケージ実験において,個体識別をした巻貝類各種の成長を調査し,成長式を算出する。貝類各種の消化酵素活性分析や炭素・窒素安定同位体比分析の結果から,室内の摂餌実験と季節ごとの野外における活動活性を調査する。これらの成果について各種学会で公表する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大による調査活動の制限や学会大会のオンライン化のため,予定されていた調査の物品費や学会参加旅費が使用されなかった。次年度の調査,実験や学会参加で使用する予定である。
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