2023 Fiscal Year Annual Research Report
Impact of the climate-induced changes in the regional water cycle on the primary and secondary production of the Sea of Japan side
Project/Area Number |
20K06206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 啓太 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (80722024)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 舞鶴湾 / 日本海側気候 / 気象条件 / 栄養塩 / プランクトン / 珪藻 / マガキ / カイアシ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
舞鶴湾は若狭湾西部に位置する閉鎖性の高い内湾であり、冬季に北風が吹き、雨や雪が多く降る日本海側気候に属する。舞鶴湾では真冬に植物プランクトンがしばしば大増殖し、湾内の生物生産を駆動する。このような冬季ブルームは日本海側気候と密接に関連しており、近年の温暖化や少雪化などの影響によりその時期や規模が変化しつつあると考えられる。一方、舞鶴湾は潮汐が小さいため、潮汐の干渉をほとんど受けずに気象の影響を検出することができる。そこで、冬季ブルームの発生機構とその波及効果を解明することを目的に、異なる気象条件のもと、冬季に舞鶴湾の集水域から海域までを高頻度に観測し、栄養塩濃度やプランクトン密度の時系列変化を解析した。 舞鶴湾の植物プランクトン動態を観測した結果、強風により鉛直混合が促進された後、大雨や大雪にともない陸水が流入すると、珪藻が増殖することが明らかになった。珪藻の休眠期細胞が海底から再懸濁され、発芽・復活後に陸水由来の栄養塩を利用して増殖すると考えられる。特に発芽・復活の直前に硝酸が供給されるか否かが重要とみられる。 硝酸の供給機構を究明するため、舞鶴湾の集水域から採取した降水と河川水の栄養塩濃度、水の水素・酸素安定同位体比、硝酸の窒素・酸素安定同位体比を測定した。その結果、河川水中の硝酸の大部分は降水に由来せず、降水により押し出されるように流出する土壌水や地下水に由来することが明らかになった。 冬季ブルームの波及効果を追究するため、マガキ成長速度とカイアシ類生息密度を調べた。その結果、前者と冬季ブルームには明瞭な関係が認められなかったが、後者は冬季ブルームの規模の大小に応じ増減した。以上により、舞鶴湾の冬季ブルームは日本海側気候により促進され、特にプランクトン生食連鎖に貢献していることが示された。
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