2020 Fiscal Year Research-status Report
バイオテレメトリとDNA解析によるアオリイカの人工産卵床の利用実態の解明
Project/Area Number |
20K06208
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
海野 徹也 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (70232890)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アオリイカ / 人工産卵床 / 回遊 / 産卵 / イカシバ / バイオテレメトリ |
Outline of Annual Research Achievements |
アオリイカは沿岸漁業や遊漁対象として優良資源であり、本種の資源を維持・増殖するため、各地で人工産卵床の設置が行われている。中でも、間伐材を利用した「イカシバ」が漁業者や遊漁者らによって設置されている。ところが、親イカの産卵回遊生態や、イカシバなどの人工産卵床の利用実態や有効性については未知である。 本申請課題は、親イカの産卵場におけるイカシバと自然産卵床への回遊実体の解明、ならびに、それらを産卵利用した親イカの個体数を客観的評価指標として、イカシバの有効性を科学的に検証する。 初年度は、親イカを対象に超音波バイオテレメトリを行うための検討事項として、まず、超音波発信器の装着実験を行った。水族館に飼育中の親イカ4個体の胴体尾部先端に模擬発信器を装着し、経過観察を行った。その結果、装着個体は、放流翌日から活発に摂餌し、遊泳行動も非装着個体と同様であった。なお、7日後まで模擬発信器の脱落は認められなかった。 イカシバが設置されている三重県引本湾で、親イカ1個体を釣獲し、水圧センサー付の超音波発信器(Vemco社制)を装着し、追跡した。放流個体は、放流後、除々に湾外方向へ移動したが、移動距離は1日に数十メートルで、放流後2日目まで引本湾に留まっていた。その間、放流個体は主に中層を遊泳していた。3日目以降は天候が悪化したため、追跡を中止した。 今年度、開発された超音波発信器の装着方法により、超音波バイオテレメトリによってアオリイカの産卵場への移動や滞留などの基礎的知見を得ることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つは、超音波バイオテレメトリによって親イカの産卵場への移動や滞留などの基礎的知見を得ること、また、同手法によって親イカのイカシバの利用実態や、基質選択性を明らかにすることである。現在まで、親イカへの超音波発信器の装着方法を検証し、最適な装着方法を確立した。また、フィールドで、親イカに超音波発信器を装着し、追跡に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によって、親イカへの超音波発信器の装着方法が確立され、フィールドでその有効性が検証された。今後は、調査個体数を増やし、親イカの産卵場への移動や滞留とイカシバの利用実態を明らかにする。 バイオテレメトリと平行し、イカシバと海藻類に産卵された卵嚢塊を対象に、多型性に富むミトコンドリアおよび核DNAマーカーによる多型解析を行うことで、繁殖貢献した親イカ数を推定する。次年度は、多型解析に有効なマーカーを検証し、実際に産卵床の卵魂を用いて多型解析を行う。
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