2021 Fiscal Year Research-status Report
バイオテレメトリとDNA解析によるアオリイカの人工産卵床の利用実態の解明
Project/Area Number |
20K06208
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
海野 徹也 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (70232890)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アオリイカ / イカシバ / 回遊 / バイオテレメトリ / 繁殖貢献 / 父系判別 / DNAマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
アオリイカは沿岸漁業や遊漁対象として優良資源であり、本種の資源を維持・増殖するため、各地で人工産卵床の設置が行われている。中でも、間伐材を利用した「イカシバ」が漁業者や遊漁者らによって設置されている。ところが、親イカの産卵生態やイカシバなどの人工産卵床の利用実態や有効性については未知である。 本申請課題は、産卵床を利用した親イカの個体数を把握するため、産卵床の卵塊に対してDNAマーカーによる多型解析を行い、イカシバと自然産卵基質で推定親イカ数を比較し、イカシバの有効性を科学的に検証する。 本年度は、マイクロサテライトDNAマーカー7座を用いて、まず、アオリイカ集団に対して多型性を確認した。その結果、いずれのマイクロサテライトDNAマーカーも高い多型性を示した。今後、マイクロサテライトDNAマーカー7座は高感度DNAマーカーとして利用できることが分かった。次に、日本海で漁獲された雌のアオリイカ10個体を用い、口球外唇部や受精嚢内の精莢からDNAを抽出し、DNAマーカー7座を用いて多型解析を行った。10個体の雌から分離した精莢は335本に達し、全てのアオリイカが複数の雄に由来する精莢を有していることが明らかになった。DNA多型解析による父系判別から推定した雌1個体あたり平均交接個体数は2.4個体となった。 次に、自然産卵床から採集した卵塊を用いてマイクロサテライトDNAマーカーによる多型解析を行った。その結果、繁殖貢献したオスの数は1個体であった。 本年度はマイクロサテライトDNAマーカー7座を用いて、雌イカの精莢を用いた父系判別に成功した。また、これらのマーカーを用いて、卵塊に対しても交接個体数の判定が可能であることが分かった。来年度は、イカシバや自然産卵床から、より多くの卵塊に対して多型解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つは、超音波バイオテレメトリによって親イカの産卵場への移動や滞留などの基礎的知見を得ること、また、同手法によって親イカのイカシバの利用実態や、基質選択性を明らかにすることである。現在まで、親イカへの超音波発信器の装着方法を検証し、最適な装着方法を確立した。また、フィールドで、親イカに超音波発信器を装着し、追跡に成功している。 次に、本研究の目的の二つ目は、産卵床やイカシバの卵塊に対してDNAマーカーによる多型解析を行い、両者の基質間で推定親イカ数を比較し、イカシバの有効性を科学的に検証することである。これまでに、マイクロサテライトDNAマーカー7座を用いて、精莢を用いた父系判別に成功し、卵塊に対しても交接個体数の推定に到った。これら高感度DNAマーカーはアオリイカの繁殖生態を明らかにするためのDNAマーカーをして非常に有効であり、今後は、DNA多型解析を通じてイカシバの有効性を検証できる。 以上、本研究課題は、最終年度に向けて順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によって、親イカへの超音波発信器の装着方法が確立され、フィールドでその有効性が検証された。今後は、親イカの調査個体数を増やし、親イカの産卵場への移動や滞留とイカシバの利用実態を明らかにする。 バイオテレメトリと平行し、イカシバと海藻類に産卵された卵塊を対象に、多型性に富むDNAマーカーによる多型解析を行うことで、繁殖貢献した親イカ数を推定する。
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